日本相撲協会危機管理委員会の調査結果報告書の内容は次の通り。(力士の敬称略)

 ▽調査態勢と方法

 危機管理委の高野利雄委員長の下、3人の弁護士で調査チームをつくり、日馬富士、貴ノ岩ら関係者13人の事情聴取、暴行現場となった飲食店の現地調査などを11月14日から12月19日まで実施。

 ▽認定事実

 一、秋巡業中の10月25日に鳥取県内で行われた食事会に白鵬、日馬富士、鶴竜、照ノ富士、貴ノ岩、石浦らと関係者の合計13人が出席した。

 一、1次会で白鵬が、9月に粗暴な言動をしたとして貴ノ岩をモンゴル語でとがめた。日馬富士が貴ノ岩をかばって、その場は収まった。

 一、午後11時すぎから翌26日午前2時ごろまでの2次会には1次会の出席者のほとんどが参加した。白鵬が貴ノ岩と照ノ富士に日ごろの言動について注意した。白鵬は鶴竜に対しても、貴ノ岩と照ノ富士への指導が不十分であると説教した。

 一、白鵬の説教が一段落したと考えた貴ノ岩がスマートフォンをいじっているところを見た日馬富士が「大横綱が話をしている時に何で携帯をいじっているんだ」と注意した。

 一、貴ノ岩は「すみません」と謝ったが、日馬富士は貴ノ岩が謝罪せずににらみつけるような表情をしたと感じ、素手で貴ノ岩の頭部や顔面をたたいた。日馬富士はシャンパンのボトルを振り上げたが、手が滑って落とした。続いてカラオケのリモコンで貴ノ岩の頭部を数回殴打した。

 一、白鵬は日馬富士の動作を見て「物は持たないようにしましょう」と声をかけた。日馬富士がリモコンで貴ノ岩を殴った直後に制止した。

 一、日馬富士が最初にたたいてから収まるまでの時間は数分間程度と思われる。素手による殴打は十数回とみられるが、ビール瓶による殴打や、馬乗りになったりアイスピックを持ち出したりしたという事実は認められない。

 一、10月26日に貴ノ岩は日馬富士に「昨日は、すいませんでした」と謝罪し、双方が握手をかわした。日馬富士はこれで本件は落着したと考え、伊勢ケ浜親方に報告しなかった。白鵬、鶴竜も同様の認識から各自の親方に報告しなかった。

 一、貴ノ岩は、貴乃花親方に対し、酔っぱらって転んだと事実に反する説明をした。

 一、貴ノ岩は10月26日に鳥取市内の病院で頭部裂傷の縫合などの治療を受けた。その後、広島市内、福岡県田川市内の病院に通院し、11月5日から9日まで福岡市内の病院に「脳振とう、左前頭部裂傷、右外耳道炎、右中頭蓋底骨折と髄液漏の疑い」で入院。12月5日から別の病院に入院している。

 一、貴ノ岩は秋巡業に最後まで参加した。巡業終了後の10月29日に貴乃花親方とともに鳥取県警に被害届を提出した。

 一、貴ノ岩は、自分に対する説教が終わった後にスマートフォンを扱っていただけで特に礼を失する行為をしていないと考えている。日馬富士の引退は望んでいたわけではなかった。

 一、日馬富士は真摯(しんし)な反省の態度を示していたが、11月29日に責任を取って現役を退いた。

 一、貴乃花親方は「警察の調査を優先させたい」などとして協会の調査への協力を拒否していたが、12月19日に貴ノ岩の事情聴取に応じてもよいとの意向を示した。

 ▽関係者の責任

 一、日馬富士が貴ノ岩に対して肉体的、精神的な苦痛を与えたことは容認できない。角界の頂点にある横綱のこのような行為は大相撲全体に対する社会の信頼を失墜させた。来日から17年間、精進してきた功績は多とするも、その責任は極めて重い。

 一、白鵬、鶴竜とも日馬富士の暴行を直ちに止めなかった。本件が大相撲の信用失墜につながったことを考えると白鵬の責任は軽くない。鶴竜にも相応の責任がある。

 一、伊勢ケ浜親方は相応の監督責任を免れない。

 一、貴乃花親方はまだ聴取できていない。聴取後に責任の有無、軽重について評価すべきだ。

 一、日本相撲協会員を統率する立場にある八角理事長には、相応の責任がある。

 ▽再発防止

 一、大相撲関係者に、指導のためであれば暴力も容認されるという意識が残存していたとの見方を否定できない。相撲界全体の意識を変革するよう努めるべきだ。

 一、暴力行為の当事者および関係者から親方へ、親方から執行部へ、執行部から危機管理委への報告が遅れて、協会の対応が後手に回った。これらの報告を義務として協会の内部規定で明文化すべきだ。