大関貴景勝(22=千賀ノ浦)の誕生だ。日本相撲協会は27日、夏場所(5月12日初日、東京・両国国技館)の番付編成会議と臨時理事会を開き、貴景勝の大関昇進を満場一致で承認した。大阪市内のホテルで行われた伝達式では口上で「武士道精神」の言葉を使用。平成最後に生まれた新大関は、感情を表に出さず、和を持って大相撲の伝統を受け継ぐ覚悟を示した。

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両こぶしを赤いじゅうたんにつけた貴景勝が、協会からの使者に頭を下げた。使者から昇進決定を言い渡されると、平成最後となる口上を述べた。

「大関の名に恥じぬよう、武士道精神を重んじ、感謝と思いやりの気持ちを忘れず、相撲道に精進してまいります」

平成以降で大関昇進した25人のうち、半数近くが口上に四字熟語を使用していたが、26人目の新大関は例にならわなかった。強調したのは武士の心得。「義理人情、受けたものを必ず返す人間になりたい」。武将の上杉景勝からしこ名を取り、感情を表情に出さない22歳が、晴れ舞台で力強い意思表示をした。

常々口にする「勝っておごらず、負けて腐らず」の精神は、武士道から習得した。口上の「感謝と思いやりの気持ち」は、母校・埼玉栄での山田道紀監督(53)の教えから。伝達式を生中継で見ていた山田監督も「まさか(その言葉を)選んでくれるとは」と驚いた。春場所14日目で逸ノ城に敗れた夜、LINEで恩師から激励を受けた貴景勝は「感謝と思いやりの気持ちを持って頑張ります」と返信。寮生活だった高校時代、厳しい上下関係で礼儀を学んだ。貴景勝は「中学を卒業してくそ生意気だったけど、そこで指導していただいてすごく感謝している」と思いを語った。

土俵の上で魅了する精神を引き継ぐ。1月の初場所で元横綱稀勢の里(現荒磯親方)が引退。次世代の日本人横綱として期待が集まる。「あまりそういう考えはしたことがない」と淡々と答えるが、現役時代、言葉ではなく相撲で魅了した同親方と力士像は共通している。「力を出し切って、力士として土俵の上で何か感じてもらえればうれしい」。31日から春巡業に突入し、多忙を極めるが「2カ月で急に強くなるときと、強くならないときがある。日々の稽古をやっていくしかない」と新元号で迎える夏場所を見据えた。【佐藤礼征】