関脇御嶽海(29=出羽海)が首位を守った。2敗対決となった平幕の阿炎を、押し出しで下して11勝目。2桁勝利で大関とりの足固めを作った今場所で、19年秋場所以来の賜杯へ、1歩近づいた。横綱照ノ富士も2敗を守って並走。千秋楽結びの一番での対戦が濃厚なだけに、互いに14日目も負けられない一番が続く。

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2度の優勝経験がある御嶽海が、ここ一番での勝負強さを見せつけた。ともに力強く踏み込んだ立ち合い。阿炎の力強いもろ手つき、のど輪を受けたが一切引かなかった。負けじと腕を伸ばして反撃。圧力で阿炎を引かせると、一気に前に出た。土俵際での柔らかさがある相手に逆転を許すことなく、きっちりと押し出しで下して首位キープ。土俵下で控えていた照ノ富士の前で、がっちりと星をつかんだ。

自身初の三役での2場所連続2桁白星を挙げ、大関とりの足固めを作った今場所。12日目に2敗目を喫したが、踏ん張って優勝へ、1歩近づいた。幕内後半戦の伊勢ケ浜審判長(元横綱旭富士)は「よく相手を見て相撲を取っていた。阿炎が少し慌てた」と分析。初優勝を狙う阿炎に対し、大関を狙う役力士として、格の違いを見せつけた。

決まり手から、今場所の好調具合がうかがえる。ここまでの11勝のうち、7勝が得意の「押し出し」によるもので、相撲を始めた小学生の時から一筋で磨いてきた。高校時代など、四つ相撲を試みたこともあったというが「びっくりするぐらいにセンスがなかった」と、すぐに押し相撲に軌道修正。「おなかの下に力を入れて、相手のアゴ付近をめがけることがポイント」。20年以上磨いた押し相撲で白星を重ねている。

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取組後は、リモート取材に応じることなく会場を後にした。勝ったにもかかわらず、リモート取材に応じなかったのは今場所では初めて。それだけ、残りの2日間に集中しているようだ。14日目は9勝と星を伸ばしている宝富士との対戦。そして千秋楽では照ノ富士との対戦が濃厚だ。終盤まで混戦模様の優勝争い。自身3度目の賜杯へ、無心で突き進む。【佐々木隆史】

▼幕内後半戦の伊勢ケ浜審判長 照ノ富士は横を向かせ、下がらなかったのがよかった。正代は力強い相撲だったけど、腰が高いからああいう形になる。腰高を修正して力強い相撲を取って欲しい。(14日目の照ノ富士-阿炎戦は)優勝が懸かっているから当てないといけない。お客さんも楽しみにしていると思う。