東前頭7枚目高安(32=田子ノ浦)が、平幕の若元春を上手投げで下し、幕内唯一の中日勝ち越しを決めた。初日からの8連勝は、17年春場所以来5年ぶり。荒れる春場所も折り返しを迎え、大関経験者の高安が悲願の初優勝へ単独トップを守った。1敗の新大関御嶽海、新関脇若隆景、平幕の琴ノ若が追いかける。

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強い高安が帰ってきた。7日目まで2敗と好調の若元春との一番。立ち合いから一気に突き放すことはできず、左四つに組み合った。制止状態が続いたが焦らない。機を狙って前に出ると右上手が届き、力強く振り回して若元春を転がした。47秒9の長期戦で決着。「今日の相撲は相四つだったのでああいう形になったけど落ち着いて取れました」と納得の一番だった。

1月の初場所は部屋で新型コロナ感染者が出たため、全休の措置が取られた。自分と向き合う時間が増え体重増加に成功。一時は170キロ中盤まで落ちたが、筋力トレと食事トレに励み、大関時代と同じ183キロまで増加した。大相撲中継の解説を務めた間垣親方(元横綱白鵬)が「食べ頃というか、ジューシーというか。みずみずしさがある。張りがある」と評価するほど見た目も変化。高安本人も「目的を持って増やした。体調をしっかり整えてきた」と手応えを口にした。

17年春場所以来となる初日から8連勝を果たし「部屋の横綱(稀勢の里、現二所ノ関親方)と連勝していたのを思い出します」と当時を懐かしがった。その二所ノ関親方が引退後は、これ以上ない稽古相手になっていたが昨年8月に独立。今は部屋に関取が自分しかいないが言い訳にはしない。「力量の差はあるけどいろいろなタイプはいる。いろいろ考えて番数を増やしてやってきた」と質より量にこだわって稽古に励んできた結果が実を結びだした。

単独トップに立って荒れる春場所を折り返した。ただ今は「特に気持ちは変わらない」と1日一番に集中している。初優勝への期待も高まるが「今日の相撲が終わったので、またリラックスして気を引き締めていきたい」と多くは語らない。大関経験者が悲願達成に向けて突き進む。【佐々木隆史】

▼八角理事長(元横綱北勝海) 御嶽海は立ち合いがいいから、豊昇龍は何もできなかった。この立ち合いを15日間できるかが、今後の御嶽海の課題。前半戦の高安は自分から攻めている。正代は開き直って、思い切りが出てきた。