優勝争いは逸ノ城次第と思っていました。宇良は相手としては、やりにくいタイプです。ただ、あの体を生かせば問題ない。そんな相撲でした。今場所、敗因となっていた張り差しも、中途半端でなく思い切り張ったから宇良も顔をそむけました。あれで左上手が近くなり、怖がらずに前に出ることが出来ました。あの体を生かせば鬼に金棒。最後の大事な一番で本来の力を発揮しました。初優勝の逸ノ城ですが正直な感想は「やっと優勝か。遅かったな」というところです。13勝、14勝しても白鵬に阻まれていましたが元々、実力のある力士です。今場所をスタートラインに大関、横綱を目指してほしいです。

逸ノ城の優勝が決まった結びの一番は、優勝の可能性が消えた貴景勝が意地をみせました。「力士」と書いて「ぶし」と読む男としては負けられない一番だったでしょう。ただ、心の中ではそうでも、相撲は自分のリズムで理詰めの攻撃でした。いなしが効いたことで横綱が「また来るのか」と構えたので、その後の押しが余計に効きました。大関に上がったころの相撲で忘れないでほしいです。

コロナによって前代未聞の事態が起こり、今場所は本当に疲れました。でも、力士や親方衆はもちろん大相撲に関わる人、私たちが見えないところで興行を支えた裏方さんは、もっと大変だったでしょう。命にかかわることですから、どうか無事であることを祈るばかりです。同時に、修羅場のようなこの経験を、後輩たちのためにも今後に生かしてほしいです。(元横綱若乃花 花田虎上・日刊スポーツ評論家)

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