日本相撲協会は29日、大相撲秋場所(9月11日初日、東京・両国国技館)の新番付を発表した。

注目されるのは、7月の名古屋場所を新型コロナウイルスの感染、または部屋に感染者が出たことで途中休場を余儀なくされた力士たちの番付昇降だ。これまで場所前に判明し全休した力士は据え置き、または1枚程度の降下にとどまっていたが、今回は前例のなかった場所中の途中休場だ。番付編成も難航が予想されたが、ではフタを開けてみたらどうなっていたか、審判部の意図を探ってみた。

別表のように、場所前に判明し全休した高安(32=田子ノ浦)を含め、コロナ禍により休場した幕内力士は15人。先場所の成績と番付昇降から、番付編成の基準のようなものが明確に分かった。まず、休場した日(不戦敗の日)の時点で既に勝ち越しが決まっていた力士は、番付が上がったということ。該当するのは翔猿(30=追手風)と錦木(32=伊勢ノ海)の2人だ。逆に不戦敗を含め負け越しが決まっていた力士は番付が降下している。遠藤(31=追手風)、隠岐の海(37=八角)、北勝富士(30=同)、剣翔(30=追手風)、大奄美(29=同)の5人だ。

いずれも番付の上げ幅、下げ幅は他の皆勤力士の成績により左右されるが、これは通常の番付編成と同様だ。例えば遠藤は13日目の不戦敗の時点で3勝10敗と7点の負け越しだが、番付降下は1枚。皆勤力士の上げ下げで1枚降下にとどまったと思われる。

そして残る、不戦敗した時点で勝ち越し、負け越しが決まっていなかった力士は、大関御嶽海(29=出羽海)はじめ7人全員が番付据え置きとなった。仮にコロナ禍に見舞われず出場し続けていれば、負けが込んでいた力士は巻き返して勝ち越していたかもしれない。逆に白星が先行していた力士は、黒星が続き負け越していたかもしれない。「あのまま出ていれば勝ち越して番付を上げられていたかもしれないのに…」と思う力士がいたかもしれないし、一方で逆に「あのまま出ていたら負け越して番付降下は免れなかったかもしれない」と胸をなで下ろした力士がいるかもしれない。ただ、いずれにしても予測がつかないことから「中立的解決策」として、番付据え置きの処置がとられたと思われる。

唯一の例外が玉鷲(37=片男波)で、不戦敗が8敗目となったが番付据え置きとなった。全く同じ13日目の不戦敗で負け越しが決まった剣翔は1枚の降下となっている。ただ、これも他の皆勤力士の番付昇降との兼ね合いと思われ、禍根を残したり、整合性がないなどと物議を醸すほどのものではないだろう。