ここから大関復帰への足がかりをつかむ-。日本相撲協会は30日、大相撲夏場所(5月12日初日、東京・両国国技館)の新番付を発表した。

大関経験者で注目の朝乃山(30=高砂)は、番付を西前頭筆頭から1枚上げて、東の小結に就いた。昨年の目標に掲げていた「年内三役復帰」は半年ほど遅れたが、大関昇進の目安とされる「三役で3場所通算33勝」のスタート地点には着いた。

昨年の朝乃山は、西前頭2枚目の好位置につけていた9月の秋場所は、前半の4連敗が響き9勝6敗。勝ち越せば三役復帰という東前頭筆頭に番付を上げた翌九州場所は、秋巡業でケガをし初日から休場。8日目から出場し4勝4敗と健闘したが、7つの休みが響き番付が降下。出直しの今年1月の初場所は初日から7連勝で復活優勝の夢も抱かせたが、ここでも負傷し4日間の休場。再出場後は2勝1敗で何とか9勝3敗3休という数字を残し、先場所は西前頭筆頭につけた。その先場所は9日目まで4勝5敗だったが、10日目から5連勝。14日目には、110年ぶりの新入幕優勝を果たした尊富士に土をつけ存在感を示した。

そして迎える今場所は、番付上は関脇だった21年秋場所以来の三役復帰。ただその場所は不祥事で6場所連続休場処分の2場所目で、土俵には立っていない。実際に三役力士として本場所の土俵で相撲を取るのは、大関昇進直前の関脇だった20年3月の春場所以来。なお小結は、その前年の19年11月の九州場所以来となる。

夏場所といえば朝乃山にとっても、力士人生で忘れられない思い出がある。西前頭8枚目で迎えた19年5月の夏場所だ。12勝3敗で初優勝を飾り、表彰式の土俵で当時の米国トランプ大統領から米国大統領杯を直接、授与された。その後、大関に駆け上がった後、コロナ禍の不祥事で大関からの陥落という憂き目に遭ったが、昨年5月も再入幕で優勝次点の12勝3敗の成績を残すなど、夏場所の験の良さが朝乃山を後押しする。

ただ懸念されるのが、30歳を迎えた体がケガがちになっていることだ。昨年もそうだったが、今月25日の千葉・木更津巡業中の稽古にも右膝を負傷してしまった。右膝内側側副靱帯(じんたい)損傷で、診断の全治は3週間。カレンダー上は夏場所にギリギリ間に合う公算だが、稽古の再開時期や、完治できるのかなど不安要素を抱えたまま本場所を迎えることになる。本人も「膝のケガは初めてなので、だいぶ嫌な感じ」と話しており、その影響が懸念される。通例で小結は、序盤から横綱、大関戦が組まれることが多く、回復具合やスタートダッシュが注目される。