大逆転優勝の可能性を残した。東前頭6枚目の隆の勝(29=常盤山)が、優勝争いを独走していた横綱照ノ富士(32=伊勢ケ浜)に快勝。

一方的に寄り切り、全て照ノ富士を相手に通算3個目の金星を挙げた。11勝3敗とし、2敗の照ノ富士とは1差。1場所15日制が定着した1949年(昭24)以降、13日目を終えて2差から逆転した前例はない。他力の要素はあるが前代未聞の快挙に挑む。

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走りだしたら止まらなかった。真っ向勝負を挑んだ隆の勝が、左でおっつけ、右はのど輪で照ノ富士の上体を起こした。休まず前に出ると、スパッと右を差して寄り切り。一直線に土俵外へと追いやった。「ちょっと『エッ』と思った。ありえないと」と、自分でも驚く快勝だった。無数に舞った座布団の1つが頭に当たり「フワフワしていたのが元に戻った」と笑った。

通算3個目の金星で前回は2場所前だった。この時は照ノ富士が、隆の勝に敗れた翌日から休場。「調子のいい横綱に勝ったので自信になる。特別感がある」と胸を張った。前日は同部屋の大関貴景勝が照ノ富士に敗れ、負け越して大関陥落が決まった。その敵を討つ格好。同じ西の支度部屋に戻ると、貴景勝に「おめでとう」と声を掛けられ、グータッチを交わした。緊張感のある稽古場で、2人が会話することはほとんどない。それがこの日の朝は珍しく、貴景勝からアドバイスを受けた。内容は「ナイショ」と話し、笑った。

今場所前、青森・三沢市出身の27歳の一般女性と結婚したことを明かした。場所中は電話はせず、短いメールのやりとりのみ。初優勝に近づく金星でも「勝ったね、ぐらいだと思う(笑い)。メールはそれぐらいで、ちょうどいい。会った時に言ってくれると思う」と心の支えになっている。

22年夏場所は逆に、照ノ富士をリードして優勝争いの先頭で終盤を迎えた。だが13日目、千秋楽に敗れ、照ノ富士に逆転優勝をさらわれた。当時から変わらずやっているのが「左手が使えていない」などと、特に意識したい課題を、メモ帳に書き留める作業。それを東京場所なら自宅の玄関に張り、地方場所ならスマートフォンで撮影して待ち受け画面にして強く意識。その繰り返しで2年前の優勝争いよりも「自信を持ってできている」という。優勝争いは1差に迫るも、自力優勝はないだけに「まだ遠い」と冷静。ただ大逆転の可能性を自らの手で高めたのも確かだ。【高田文太】

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