大関経験者で西十両13枚目の朝乃山(31=高砂)は、連勝が「4」で止まり、10勝3敗となった。29歳で関取在位も長い西十両3枚目錦富士と、好角家にとっても意外な印象がある初顔合わせに敗れた。相手の鋭い踏み込みに、立ち合いから押し込まれ、最後は上手投げに転がった。前日12日目を終えて、十両優勝争いは自身と同部屋の新十両朝白龍の2人が、2敗で並んでいた。だがこの日敗れ、朝白龍は勝ったことで、3敗で並んだ錦富士とともに、1差で追う展開となった。
取組後は「立ち合い負けですね。自分のペースで取りたかったですけど、受ける形になってしまいました。上手を取られて、腰も伸びきっていた。気迫負けじゃないですか」と、完敗を認めた。錦富士とは、巡業の朝稽古で胸を合わせたことがあったというが、相手は今場所、故郷青森県の歴史を背負って臨んでいる。142年続く青森県出身の幕内在位の歴史を途切れさせまいと、再入幕へ目の色を変えて今場所に臨んでいる。その気迫が、巡業の朝稽古で感じた時以上の圧力に感じ、立ち遅れて防戦一方となった。
前日12日目に、2年4カ月ぶりとなる2桁白星に到達した。東前頭14枚目で12勝3敗の優勝次点だった、23年夏場所以来、14場所ぶり。ただ、前日の取組後は「1日1番。また明日から、気を引き締めていきたい」と話し、感慨深い様子などは見せずに、すぐにこの日の取組を見据えていた。それでも完敗となったが「終わったことは仕方ない」と、引きずらないことが大事と自らに言い聞かせた。
この日、自身が新十両として臨んだ17年春場所から、長く付け人を務めてもらった同部屋の序二段朝童子が、現役最後の取組を行い、敗れた。この日の自身の取組後に朝乃山は「さみしいけど、本人が決めたこと。第2の人生も頑張ってほしい。感謝の気持ちを込めて、千秋楽の断髪式ではさみを入れたいと思います」と、しんみりとした表情で語った。
取組前の花道で朝童子が「バンバン」と、朝乃山の背中が真っ赤になるほどたたくのは風物詩だった。その役割の“初代”だった元幕下の朝鬼神から受け継ぎ、大関を務めたころを支えてもらっていた。年下の兄弟子への感謝の思いを前面に出すとともに、残り2日間へと気持ちを切り替えていた。

