ファミリー映画の季節に大人にも見応えのある2本の作品が公開中だ。

1本は「しん次元! クレヨンしんちゃん THE MOVIE 超能力大決戦~とべとべ手巻き寿司」。シリーズ初の3DCG作品で、表情に陰影がついた分、しんちゃんの心の動きが分かりやすい。一見、子どものわがままっぽいが、実は多くの示唆に富んだしんのすけのセリフをより印象的にする効果がある。

宇宙からの「黒い光」を受けて「暗黒のエスパー」となって世界に復讐(ふくしゅう)を誓う、今回の敵役、非理谷充(ひりや・みつる)の声は松坂桃李。「白い光」を受けて、こちらもエスパーとなったしんちゃんと対決することになるのだが、笑ってしまうくらいの非運の連続に見舞われたその半生に、否応なく同情させられる。ここでも3D陰影が活きる。「ジョーカー」をほうふつとさせるキャラで、演技に貪欲な松坂がこの役を引き受けたのも分かる気がする。

終盤、恩讐(おんしゅう)を超えたしんちゃんとの友情にはウルッとさせられる。「モテキ」(11年)などで知られる大根仁監督が初めてアニメ作品でメガホンを取り、人情の色濃い仕上がり。アクセントになる濃いキャラの声を空気階段の2人が担当して、いい味を出している。

もう1本はディズニー&ピクサーの「マイ・エレメント」。火、水、土、風の4エレメント(要素)を擬人化した4民族が暮らすカラフルなエレメント・シティが舞台だ。ディズニーお決まりの多様性が根底に流れ、キャラ設定が明快な分、紋切り型になりそうなものだが、これが不思議なほどロマンチックな作品だ。

「アーロと少年」(15年)で長編デビューしたピーター・ソーン監督は、情熱的な「火」の女性エンバーと自由で寛容な「水」の青年ウェイドを愛らしく作り上げていて、2人の間に芽生える恋心に意外なほどジンとさせられる。

それぞれの民族特性を反映した街並みは見ているだけで楽しいし、差別や対立の図式とそこから共生の可能性を見いだすドラマがいつの間にか染みてくる。

一方で、火の揺らめきや水泡の表見にはピクサーならではのアニメの限界への挑戦が感じられ、それだけで一見の価値がある。題材がシンプルだからこそ、アニメの最先端が見えやすいのだろう。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)

(C)2023 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
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