「ミステリと言う勿れ」は昨年放送された連続ドラマの中でも記憶に焼きついた1作だ。

おしゃべりと洞察力を武器に謎解きをしていく主人公に腕力に頼らない独特な「強さ」を感じ、フォローにまわる女性刑事たちのキャラクターも楽しかった。

菅田将暉演じる主人公のチリチリ頭は、若き日の石立鉄男や鶴瓶のアフロヘアをほうふつとさせる。そういえば、ダッフルコートや切りごま別封のサッポロ一番塩ラーメンといった登場アイテムも同じ頃に注目されたものが多い。

原作コミックを描いた田村由美さんの活動開始時期を調べてみると83年。同じ頃に社会人になったこともあって、世代的な共感を持った理由が分かった気がした。現代的な題材を取り上げながら、ところどころに折り込まれたそんなレトロな雰囲気に引き込まれた年配の方も少なくなかったのではないと思う。

同名タイトルで15日に公開される映画で描かれるのは、原作コミックス2~4巻の「狩集家遺産相続問題」だ。

広島で大好きな印象派展を堪能した久能整(菅田)は、女子高生の狩集汐路(原菜乃華)に突然声をかけられ、彼女を含めた4人の相続候補者による遺産騒動に巻き込まれてしまう。

住居部分や蔵が点在し、まるで城郭都市のように広大な狩集家。まるで謎かけのような遺言書…浮世離れした展開を、連続ドラマから担当している松山博昭監督は手際良く、展開の速い舞台劇のように楽しませてくれる。

それぞれに個性的な相続候補者やその周囲の人々の雑音に惑わされることなく、整は粛々と謎を解いていく。マイペースのおしゃべりに、より抑揚を感じたのは、ドラマから時間がたっているからなのか。

それにしても、よどみない長セリフに隙間無く意味を与えて聞きほれさせる菅田の力に改めて感心させられる。原を始めほとんどがシリーズ初顔。出演者それぞれのペースが、菅田話術とほどよいコントラストにになっていることにも驚く。「その日撮影するシーンについて、菅田さんを含めたメンバー全員で数時間話し合うこともざら」(松山監督)だった現場のたまものなのだろう。

松下洸平、町田啓太らスッキリ二枚目から柴咲コウ、松嶋菜々子、松坂慶子の大物女優陣までキャストは厚い。そんな多すぎるくらいの登場人物の関係も分かりやすく描かれていて、ページを戻して読み返す必要のないすっきりとした演出が気持ちいい。

伊藤沙莉の女性刑事らレギュラー陣がエピローグのように登場したのもドラマファンにはうれしかった。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)