タイム・サスペンスといえば、真っ先にリーアム・ニーソンの「96時間」を思い浮かべる。これをぐっと縮め、列車内の限定空間で繰り広げられるのが台湾の「96分」(13日公開)だ。

映画は台湾全土を震撼(しんかん)させた爆弾テロ事件で幕を開ける。爆発物処理の専門家、宗は2つ仕掛けられた爆弾の内1つの解除に成功するが、もう1つは爆発し、多くの犠牲者を出してしまう。「英雄」とたたえられながら、彼は一線を引く。この時迫られた「二択」が作品のキーワードとなる。

3年後、宗は妻の刑事とともに台北から高雄に向かう高速鉄道に乗っていた。台湾は日本のシステムを導入しているので、列車は日本製。新幹線と同じ見慣れた車内に親しみがわく。そこに列車内に爆弾が仕掛けられたとの情報がもたらされる。

速度制限の付いた時限爆弾。3年前の事件に因縁のある犯人も同乗した列車内で高速走行を余儀なくされ、ノンストップの攻防となる。前を走る列車にも同様の爆弾が仕掛けられ、宗はまたしても二択を突きつけられる。

限られた時間の中、乗り合わせたかつての上司や物理学者、そして刑事の妻とともに宗の奮闘が始まるが…。

宗と妻は3年前の事件の遺族会からの帰路という設定で、列車には多くの遺族が乗り合わせている。さらに、物理学者の離婚寸前の妻は前の列車に乗っており、複雑な人間模様がストーリーに絡む。アクション演出で知られるホン・ズーシュアン監督は、ていねいな人物描写で心理戦も際立たせる。

新幹線の高度なシステムに裏打ちされた先行列車との並走シーンがハリウッド発のバーチャル技術で再現される。宗が列車から列車に飛び移るという荒技も登場するが、これがなかなかリアルで説得力がある。

主演はNetflixのホラーコメディー「僕と幽霊が家族になった件」のリン・ボーホン、妻役には「私の少女時代Our Times」のビビアン・ソンと台湾の一線俳優が配されている。

「24時間」同様に分単位が示されるリアルタイム・サスペンスは見応えがあった。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)