宇宙を舞台にした作品と言えば、「スター・ウォーズ」のような壮大な物語や、SF映画の金字塔「ブレードランナー」などがあるが、今作は1人の女性宇宙飛行士と娘の絆に焦点を当てる。これまでにない斬新な視点だ。

欧州宇宙機関(ESA)で日々訓練に励むフランス人宇宙飛行士のサラ(エヴァ・グリーン)は物理学者の夫と離婚し、7歳の幼い娘ステラを女手一つで育てるシングルマザー。ある日、サラは人類初の火星探索の最終準備を目的とした「プロキシマ」と名付けられたミッションのクルーに抜てきされる。

長年の夢が実現する一方で、宇宙へと旅立てば約1年もの間、ステラと離れ離れになってしまう。キャリアと娘への愛情のはざまで苦悩する姿は胸が締め付けられた。出発の日が2カ月後に迫る中、サラはステラと「打ち上げ前に一緒にロケットを見る」という約束を交わす。

ストーリーは単調だが、それぞれの視点からそれぞれの内なる「宇宙」が丁寧に描かれている。坂本龍一が音楽を担当。母と娘が葛藤を乗り越え、成長する姿に寄り添ったやさしい旋律が心に染みた。【松浦隆司】

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