12日(日本時間13日)に授賞式が行われる米アカデミー賞でミシェル・ヨーの主演女優賞、キー・ホイ・クァンの助演男優賞など最多10部門で11ノミネートされた。前哨戦のハリウッド外国人記者協会主催のゴールデングローブ賞、全米俳優組合主催のSAG賞ともにヨーが主演女優賞、クァンが助演男優賞受賞。SAG賞受賞はアジア系俳優初でアカデミー賞最有力と目されるが、メジャースタジオ製作ではなく独自の作品で人気のスタジオA24のインディペンデント作品だ。

ヨー演じる主人公は経営するコインランドリーが破産寸前の、さえないおばさんだが、クァン演じる別の宇宙から来たと名乗る夫に突然、強大な悪と戦う使命を託される。言われるがままマルチバース(並行世界)にジャンプし、カンフーマスターばりの能力を手に入れて救世主に覚醒。アクション女優として世界的に知られる、ヨーのカンフーは60歳の今もキレキレだ。

マルチバースを行き来する展開が、やや分かりにくい感もあるが互いを思い合う家族の物語という軸を念頭に置けば乗り越えられる。何より85年の米映画「グーニーズ」で発明少年データを演じたクァンの、51歳になった姿は感慨深い。俳優を休業し武術指導など製作側に回るも、原点回帰を期しオーディションを受け出演。データをオマージュした場面含め見逃せない。【村上幸将】

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