AKB48グループ3代目総監督の向井地美音(22)が各界のリーダーから学ぶ「リーダー論」の第8回からは、バレーボール元女子日本代表で、12年ロンドンオリンピック(五輪)銅メダルの竹下佳江氏(42)の登場です。

日本代表のキャプテン、そしてセッターとして、チームをまとめてきた竹下氏。女性の集団をまとめる共通点を持つリーダー同士が語り合いました。【取材・構成=大友陽平】

女子バレー元日本代表の竹下佳江氏(左)とリーダー論を語り合ったAKB48向井地美音
女子バレー元日本代表の竹下佳江氏(左)とリーダー論を語り合ったAKB48向井地美音

向井地 はじめまして。AKB48の向井地美音と申します。よろしくお願いします! 早速ですが、竹下さんが選手時代にキャプテンとして心がけていたことはどんなことですか?

竹下 選手時代は、とにかくコミュニケーションをとることを意識してやっていました。

向井地 私は後輩メンバーとコミュニケーションをとるのがあまり得意な方ではなくて、どう話したらいいんだろう…と迷うこともあります。どちらかというと年上は得意なんですけど…。

竹下 代表チームでも、Vリーグのチームでも、私は32歳まで現役をやっていたんですけど、一番下は18歳で高校を卒業したばかりの選手です。年齢の幅はAKBさんよりは狭いのかな? 同じくらいですかね? そうした中では、私自身も年下のメンバーとコミュニケーションをとるのを得意とはしてなかったんですけど、年代、年代にコミュニケーションを上手にとるのが得意で、上と下をつなげられるメンバーがいるので、そういう人たちに力を借りながらやっていました。

向井地 著書「セッター思考 人と人をつなぐ技術を磨く」も読ませていただいたんですけど、そのことについて、メモさせていただきました! そのメンバーを見極めるためにはどうしていましたか?

竹下 自分とコミュニケーションをよくとる中で、力になってくれる人を見極めていたかもしれないですね。

向井地 なるほど…。AKBでそう…というわけではないんですけど、例えば、年上や年下、同世代で見せる顔が違うタイプの人がいる場合もあると思います。そうすると、その中で少し浮いてしまうということもあります。

竹下 女の子の世界っていろいろなことがあるので、なかなか1つにまとまることは難しいと思うんです。でも例えば目標が一致して、そこに向かっていく時は、みんながビックリするくらいの力を発揮するのも、女性の集団だと思います。そういう意味では、ある程度割り切らないといけないと思いますし、チームはバランスが大事なので、自我が強い人もいれば、優しい人もいれば、いろいろな個性があっていいと思うんです。だからこそ認めてあげることが必要なのかなと思います。

-女性ならではのまとめる難しさはありそうです

竹下 女性はよく小さな群れを作っていったりするんですけど、良い群れになれば良いチームになっていくですけど、それが逆に悪い群れになればバラバラになっていきます。だからこそ、中心になっているメンバーがどう見極めていくかというのが難しいと思います。目標に対して足並みをなかなそろえられない人っていうのは、結局その集団からはあふれていってしまうのかなとは思います。

竹下佳江氏とオンラインでトークする向井地美音(撮影・大友陽平)
竹下佳江氏とオンラインでトークする向井地美音(撮影・大友陽平)

向井地 悪い群れというか、モチベーションが高く保てないところで群れてしまうようなことは…大なり小なり私も過去にあったと思います。その群れのモチベーションを上げて、いい群れにしていく方法はありましたか?

竹下 やっぱり、女性の場合はねたみ、ひがみが強いですよね。自分が苦しい時って、どうしても同じような考えの仲間と一緒にいた方が楽…と悪い群れに流れてしまうと思うんです。向井地さんは研究生も経験されているんですよね? 例えばそうした自分の経験談とかを話してあげるのも、1つなのかなと思います。華のある世界にいると、どうしても「苦しい時期があったんだよ」と言っても、「いやいやいや…」と思われてしますこともあると思うんですけど…。

向井地 (笑い)

竹下 その部分に寄りそってあげるというか…。結局女性って「共感の生きもの」じゃないですか? 同調するのではなく、寄り添ってあげるというのも大事なのかなと思います。

向井地 寄り添ってあげた例とかありますか?

竹下 バレーボールは、1チームでユニホームを着られるのは12~14人くらい。なおかつスタメンは6~7人で、あとはバックアップとなると、試合に出られない選手は腐りがちになってしまうんですけど、そういう選手達にどういう声をかけてあげるかによって、チームでの立ち位置とか、自分が必要にされているのか? とか、そういうことを感じられる選手は上がってくることが多いので、そういう時に声をかけて、期待するというのはありましたね。

向井地 AKB48でいうとシングルの選抜のような感じなんですかね。当落線上にいるメンバーはあきらめずにやっていても、今は遠い位置にいるメンバーを、ギリギリの位置までに引き上げるには…。

竹下 そこまで頑張れないメンバーは、なぜその集団の中にいるんでしょう?

向井地 (苦笑い)。頑張っていてもなかなか見つけてもらえないと思ってしまったり、頑張る方向性に悩んでしまうことがあると思います。中高生も多くて、その年代でそうなってしまうと…。

竹下 芸能界の若い世代の子たちって、きっと普通の中高生よりも大人なのかな? っていうイメージがあるんですけど、どうなんでしょうか?

向井地 そうだと思います! 自分で何かを頑張ろうという気持ちはもともとあると思いますし、すごく大人な子は多いです。だからこそ、例えば「自分はセンターになれる人ではないんだ」ということが分かってしまうということもあると思います。

竹下 自己分析がしっかりできるということですね?

向井地 入ってくる時はみんな「センターになりたい」って入ってくるんですけど…。私も途中で「自分は違うのかな?」って思ってしまった時もあったので、その気持ちも分からなくもないんです。

竹下 向井地さんは「自分は違う」て思ったところから、どう変わったんですか?

向井地 1年間くらいモチベーションがうまく保てない時期もあったんですけど、「AKB48グループセンター試験」というイベントがあって、そこで1位をとったんです。たくさんメンバーがいる中で1番なんだって気付いた時に、センターではなくて、総監督という道もあるんだと思えたんです。メンバーが何百人もいる中で、1番になれるものはないと思っていたんですけど、1番になれて自信がつきました。

竹下 私は身長が159センチで、社会人チームに入った時も「ユニホームも着られないかもしれないですよ」「コートに立てないかもしれません」というところからスタートしています。それでもトップチームでバレーがやりたいという気持ちで入ったんですけど、その時の監督に言われたのは「とにかくチームの中で世界一になるものを一つ見つけろ」と言われたんです。それはバレーの技術だけでなくて「誰よりも声を出す」「誰よりもハートが強い」とか何でもいいので、一つ見つけよう、と。そうすることで自信が持てるし、居場所を見つけることなのかなと思いました。今、向井地さんのお話しを聞いていて、リンクする部分なのかなと思いました。(つづく)


◆竹下佳江(たけした・よしえ)1978年(昭53)3月18日、福岡・北九州市生まれ。96年、不知火女高(現誠修高)からVリーグ「NECレッドロケッツ」に入団。97年に日本代表へ選出。00年、シドニー五輪出場を逃し、一時一線を退くも、02年から「JTマーヴェラス」に入団し、日本代表にも復帰。04年に女性選手で初めてプロ選手に。同年のアテネから五輪3大会連続出場。05~09年にキャプテンを務める。12年のロンドン五輪では中心選手として銅メダル獲得に貢献。同年にプロ野球阪神、西武、広島で活躍した江草仁貴投手と結婚し、13年に現役引退。15年に長男、18年に次男を出産。16年に「ヴィクトリーナ姫路」の監督就任。今年4月から取締役球団副社長を務める。159センチ。