日本のスナック菓子を代表する商品の1つ「カール」の全国販売の中止が発表されて、1週間が過ぎました。9月以降、関西以西では「チーズあじ」「うすあじ」の2品だけが販売されますが、大阪・ミナミの道頓堀にある巨大看板「カールおじさん」が消滅する可能性が出てきました。明治によると「看板は販売活動の一環ですので、なくすことも含めて検討中です」としています。

 グリコの走るランナーのネオン看板、かに道楽の動くカニ、づぼらやのちょうちんフグ、金龍ラーメンの躍る龍。大阪・ミナミの道頓堀は、個性的な巨大看板の激戦区です。

 「目立ってなんぼ」が大阪の文化。雑多でにぎやかな大阪を象徴する道頓堀に「カールおじさん」の巨大看板が登場したのは、08年でした。カール発売40周年を記念して企画した明治が「道頓堀の新しい顔に」との期待を込めて設置しました。

 看板は横18メートル、縦4メートル。麦わら帽子をかぶり、カールを食べている立体の「カールおじさん」の周りにはたこ焼きや串カツ、お好み焼きを手にした動物たちがいます。「カールおじさん」の隣では、カニが足を動かしています。先輩看板に負けるわけにはいきません。毎時0分にカールおじさんの麦わら帽子が浮き上がり、カエルが姿を見せる仕掛けです。

 さらに、それにつけてもおやつは「カール」。やっぱりカールと言えば「おやつ」は外せません。午後3時になると、看板に取り付けてあるビジョンにCMが流れ、歌手和田アキ子さんが現れ「3時のおやつの時間やで~」。動くカニの他にも、太鼓をリズミカルにたたく「くいだおれ太郎」人形、同じ菓子メーカーで道頓堀のシンボルとなっているグリコの走るランナーが、最大のライバルでした。

 個性派がひしめく中、当初はのんびりした表情でカールをほうばる「カールおじさん」が目立つことができるのか? 心配する声もありました。設置から9年、目立ってなんぼのミナミの街でもけっこう目立つ存在になりました。

 「カールおじさんは大丈夫やろか…」。全国発売中止の発表後、地元の浪速っ子がスマートフォンで写真を撮るシーンも増えました。明治によると、イメージキャラのカールおじさんは続投するそうです。ただし巨大看板については「検討中」です。

 「おらが村」に住み、職業、趣味とも農業。独身で若ハゲが悩みのカールおじさん。歌と踊りは村1番です。コミカルな民謡風の歌がバックに流れるカールのテレビCMソング「いいもんだな故郷は」。にぎやかなナニワの街にもすっかりなじんだカールおじさんは、つぶやいているのでしょうか。「♪いいもんだ~な~、道頓堀は~」。

【松浦隆司】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)