5月18、19日に大阪・生国魂神社で開催された上方落語のお祭り「彦八まつり」には新鮮な驚きがいくつかあった。
まずは1970年代のラジオ、テレビで一世風靡(ふうび)した横山プリン氏の登場。上方落語の重鎮、桂福団治(83)の対談相手としてトークショーとして姿を見せたのだが、はたして会場ファンのどれだけが彼の全盛期を知っていただろうか。
ラジオ大阪「カットジャパン1310」で、ハイテンポ&毒舌トークがそれまでのAMラジオに革命を起こした。視聴者からの電話がヒントで生まれた「まいど!」「おいど!」のあいさつは衝撃的でさえあった。型破りな言動は、その後のやしきたかじんさんを思わせるものでもあった。
79年には読売テレビ「プリン&キャッシーのTV!TV!」でテレビ界に殴り込み。ムチャぶりが過ぎ、ゲストの女性歌手を泣かせてしまうこともあった。
そんなプリン氏は元々、横山ノックさんの弟子からスタートした。兄弟子のやすしさんとコンビを組むも、双方の強烈な個性がぶつかりあって長続きしなかった。その後は表舞台から姿を消し、ライターなどの仕事をしていた。晩年の「横山ノック一門会」のイベントで大阪の劇場に来たこともあった。
福団治とのトークショーでは、泰然とした福団治とは対照的に、プリン氏は左右をキョロキョロ見渡し、姿勢を次々変えては落ち着かない様子だった。
「テレビやラジオの世界で生きてきたから、1分1秒の時間が気になるねん」と話した直後、旧友の福団治に向かって「次の人間国宝や!」。故桂米朝さんに次ぐ上方落語第2の人間国宝に推挙した(といっても、プリン氏に決定権はない)。
威勢の良さは若いころと変わらない。85歳のプリン氏を上方落語のお祭りで見られるとは思わなかった。うれしい誤算というやつだ。
サプライズ第2弾は、かしまし娘の三女、正司花江さん(88)が桂文枝(80)のハワイアンバンドのゲストに特別出演。「お姉さん(歌江さん)が亡くなって寂しいんじゃないかと思って、声をかけさせてもらいました」と文枝。「88歳」「88歳」と文枝に連呼されると「88歳は、もうええねん!」と声を張り上げる元気な一面も見せた。
着ているドレスは自前で50年前のもの、久々にギターを手に取ると、かつてかしまし娘がオープニングで歌っていた「うちら陽気なかしまし娘」と軽快に歌い出す。手の指が覚えているのだろう、ピックを用いてリードもベースランも自然に奏でていた。
さらに、パーカッションで参加していた桂りょうば(52)の母(しよさん)が観客席にいたのを知ると「あら~久しぶり。昔は角座でいっしょに出てたなあ」と花江。りょうばの母、すなわち桂枝雀さんの妻は、かしまし娘と同時期、ジョウサンズのメンバーとして舞台に出ていたのだ(芸名は日吉川良子)。
花江、しよさん、文枝とならんで演奏し、昔話に花を咲かせた。
ハプニング連続のイベントには、お客さんは大喜び。しばらく見られなかった人が久々にステージに戻るのも、こうしたお祭りの醍醐味(だいごみ)。芸人の世界はおもしろい。【三宅敏】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)




