「吉本新喜劇記念日2025」公演が3月2日、大阪・なんばグランド花月(NGK)で行われた。通常の新喜劇とは異なり、1部は、やなぎ浩二が82歳にして初座長を務め、2部はすっちー、酒井藍、アキ、吉田裕の4座長と間寛平GM(ゼネラルマネジャー)が勢ぞろいの豪華版。新喜劇ファンには、なんともぜいたくな1日だった。

1部、2部を続けて見て感じたのは「ベテランたちが、なんて元気なんだ!」。

1部の内場勝則(64)は「ひとりだけ特製マイクを使っているのか?」と思えるほど、声が周囲の誰よりも遠くまで通った。やや芝居がダレかかった瞬間には、内場が素早く軌道修正を試みる場面もあった。座長を勇退して、はや6年になるが、存在感がますます光っている。

そして2部では、辻本茂雄(60)が抜群だった。こちらも座長を勇退して6年。ベテラン座員として若手や中堅をサポートする立場ではあるが「新喜劇記念日」では「さすが、座長として座員を引っ張っていた男。貫禄が違う」と、うなるしかなかった。

辻本の一番の見せ場は、寛平GMとの掛け合い。破壊的なボケをかます寛平に対し、痛烈無比のツッコミを遠慮なくたたき込むのだ。声を目いっぱい張り上げ、ときには手を挙げてGMの頭をしばくことも。2人の掛け合いが始まると、芝居はいったん中断し、2人だけの世界が始まる。

寛平は強烈なボケを放ち、辻本はエキサイトしながらツッコミたおす。野球に例えるならば、160キロの速球を投げる投手と、それを豪快なスイングで打ち返す打者。

もちろん場内は大爆笑。周囲の座員たちは芝居を離れ「寛平VS辻本ショー」を楽しんでいるかのようだった。新喜劇のトップ(GM)で、芸歴でも先輩になる寛平に「なんや、お前は!」と辻本は容赦しない。ヒリヒリするような空気から、笑いが爆発していた。

その昔、花紀京と岡八郎がからむと化学反応が起こったかのようにスペシャルな世界が生まれた。芝居のストーリーを超越した笑いが、そこにはあった。名人芸だった。

最近でいえば、すっちーと吉田裕のコンビ芸「乳首ドリル」がそれに近い「2人の世界」か。

「新喜劇記念日」での寛平&辻本も珠玉のコンビ芸。「見てよかった」「見られて幸せ」と、心から感じることができた。

座長勇退後の辻本は年に数回、特別公演で座長を務めており、4月25日には「辻本茂雄GW還暦特別公演 笑って感動して元気になったらど~や!」が開幕する(5月6日まで、よしもと祗園花月)。

「元座長」という看板は、どこか寂しげなイメージがついてまわる。しかし、辻本や内場はバリバリの現役であり、60代になってますますパワーアップしたかの印象だ。【三宅敏】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)