俳優内藤剛志(71)が12日公開の映画「劇場版 旅人検視官 道場修作」(兼﨑涼介監督)に主演する。BS日テレ「令和サスペンス劇場」(土曜午後7時)で2023年(令5)から第7作まで放送されている人気シリーズの映画化だ。自主映画からスタートし、犯人役、義理の娘をいじめ抜く極悪の父親役、連続ドラマの連続出演日本記録を経て、刑事・サスペンスドラマの第一人者になった。70代を迎えてなお高みを目指し続ける、その思いを聞いた。【小谷野俊哉】
★亡き妻の俳句と旅
内藤が演じるのは定年退職した元検視官の道場修作。亡き妻の愛した俳句ゆかりの地を旅して事件に巻き込まれ、解決していく旅情サスペンスだ。
「旅情サスペンスが見ていただけるのは、実際には行けない場合が多いからじゃないですか。知らない町へ行くことは、日常的にはできない。その代替の旅行する気分みたいなものが一つ。もう一つは、人生で自分が想像していないことに出会いたいという欲求が、人間にはあるような気がする。何かとんでもない出来事に…いいほうの、ですよ。出会うかもしれない。旅って、何か変化のためのきっかけみたいに僕は思っています。その2点が、支持されている理由だと思う」
映画がやりたくて大阪から上京し、日大芸術学部の映画学科で自主映画を作り始めた。現在はドラマ中心の俳優生活で、主演ドラマが映画化される。
「『映画』『テレビ』みたいな格付けは僕の中ではない。特に今は、同じデジタル機材のセッティングを変えて撮るだけ。ただ、映画の違いってのは“みんなで見る”ってこと。テレビも家族で見ることがあるけれど、映画って横にいる人は知らない人。そういう人たちが、いっぺんに同じストーリーを楽しむっていうのが、テレビと違う。映画に出る時っていうのは、ちょっとセッティングが変わるんですよ、自分の」
★里見浩太朗さん、ありがたい
テレビシリーズと違い、今回の映画では道場修作の過去に踏み込んで描く。
「映画だと、大体30分ぐらい長くできるんです。テレビ版よりね。もう一つ何かをと考えていた中で、常に前へと行く道場が、後ろへと行く。それが、開けていないドア。やっていないことの一つが、過去に踏み込むこと。封印していたと言えばいいんでしょうか」
柄本明(77)や里見浩太朗(89)といった先輩俳優との絡みも映画ならでは。
「道場っていつも一番年上なんすよね。先輩から怒られるでも、導かれるでもいいんですけども、そういうのがなかった。今回は、スタッフが『怒られているよ、道場』みたいにニヤニヤしていたみたいです(笑い)。年とかキャリアが上の先輩の方々と、同じフレームの中に入ってみたいっていう思いが、僕自身に強くありました。里見さんは、自分が風車の弥七を演じていた時の水戸黄門、ご老公様。ありがたいです」
道場が旅先で出会う、岸山飛鳥を演じるのは羽田美智子(57)だ。
「サスペンスの女優さんて、独特の技術があるんですよ。様々な女優さんがいるけど、羽田さんはうまいですよね。経験値が高いというのもありますし、サスペンスならではのテンションのかけ方とか、ミステリアスに見せるとか、最後に感情が盛り上がって泣くとか。そういう起承転結みたいなものをスピーディーに。独特のスキルのような気がします」
映画の舞台は愛媛県の松山。
「すごい雄大な景色だったり、すてきなスポットがありました。その中でも道後温泉は、3000年のお湯の場所。どれだけの人間が、そこにいろいろな思いを持って来たかってことですね。それと俳句っていうのも、全部を説明しない中にギュッと濃縮された世界観がある」
★5月で71歳に まだまだ元気
先月27日に71歳に。元気いっぱいだ。
「もう父母からのギフトですよね。僕が努力したというよりは、元々そういう体をもらったという風に思ってまして。70歳を過ぎて忙しい毎日でも、そんなには困らない体力がある。ありがたいですね」
子役から始まり、俳優として50年以上のキャリアがある。
「違う言い方すると、役者じゃなかった時間のほうが短い。だって、小学校3年生くらいから始めて、中学、高校以外はずっと俳優です。だから、俳優であるというよりは、カメラの前にいたり、観客の前にいて、なんか表現してるってのが僕の日常ですね」
犯罪・刑事もの作品の第一人者。ただ、大ブレークしたのは、1994年(平6)の日本テレビ系の連続ドラマ「家なき子」で安達祐実(44)演じる少女・すずを虐待する非道な義理の父親役だった。シリーズ最高世帯視聴率が30%超の人気ドラマの悪役だった。
「40歳になる頃。悪いお父さんの役だけど、視聴率がすごかったので、それが一つのきっかけになった。僕、あの役しかないんですよ、やったことが。いろいろな役をやっているように見えるけど『家なき子』しかない。あとは、ほぼ刑事か医者ですから。いまだに40歳過ぎの人から『大嫌いでした』とか。それが、次への原動力にもなった」
“日本一ひどい男”を演じたことが、今日に至るきっかけになった。95年1月期のテレビ朝日系「味いちもんめ」から01年10月期の日本テレビ系「金田一少年の事件簿」まで27クール、6年9カ月続けて連ドラに出演した日本記録を持つ。
「運が良かったっていうか、人に恵まれたと思います。自分の頑張りだけじゃうまくいかない。いい出会いがあって、それが次々といい出会いを呼んでくれた」
次の出会いを求めて、旅情サスペンスは続く。
▼映画「劇場版 旅人検視官 道場修作」のBS日テレ齊藤領プロデューサー(45)
内藤さんは役から離れても、座長としてドラマ全体を引っ張っています。共演者やスタッフに気配りをしてくれて、撮影じゃなくても、その背中で思いを見せてくれるのがすごいと思います。2時間ドラマが減少する中、内藤さんとチーム全体でしっかりと作っていこうと話していました。BSのシリーズは回を追うごとに視聴者の支持を増やしてきました。それが「劇場版-」につながった。それは、ひとつのゴールですが、これをドラマに還元していきたい。しっかり2時間ドラマを作っていけば、まだまだ視聴者の支持は広がっていくと内藤さんとスタッフで話しています。
◆内藤剛志(ないとう・たかし)
1955年(昭30)5月27日、大阪市生まれ。日大芸術学部中退後、文学座研究所を経て、80年の映画「ヒポクラテスたち」でデビュー。94年の日本テレビ系ドラマ「家なき子」出演。95年1月期のテレビ朝日系「味いちもんめ」から01年10月期の日本テレビ系「金田一少年の事件簿」まで27クール、6年9カ月続けて連続ドラマ出演の日本記録。00年から26年までテレビ朝日系「科捜研の女」シリーズ。16年からテレビ朝日系「警視庁・捜査一課長」シリーズ。183センチ。血液型O。







