宝塚歌劇団は大正時代の1914年に創設。7年後に花組、月組が誕生した。2組創設100周年イヤーにOGが多数集う「宝塚歌劇 花組・月組100th anniversary『Greatest Moment』」が、大阪(梅田芸術劇場、11月3~7日)東京(東京国際フォーラム、同13~22日)で上演される。2組版と花組版、月組版があり、両組を経験した元月組トップ真琴つばさが見どころ、思い出を語った。【取材・構成=村上久美子】

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花組、月組の作品や場面を、歌やダンス、トークを交えたコンサート形式で振り返る「花組・月組 ALL」版、それぞれの「花組」版、「月組」版と複数パターンが上演される。

真琴 私は(トップで率いた)月組と(入団後配属の)花組にも出演させていただき、皆様の倍楽しめる! 雪組、星組、宙組と公演が続く可能性もありますし、100周年の連鎖だなと、思います。

コロナ禍でも、独自の歩みを止めない劇団、そして後輩たちに感謝する。

真琴 ひとつの目標が終わると、力が抜けることもありますけど、抜けなかったな…宝塚! という気持ち。皆でうまく、バトンを渡していったと思います。

2組へのイメージ、思い出はそれぞれにある。

真琴 (在籍時の)花組は高汐巴さん、大浦みずきさん、安寿ミラさん、真矢みき(当時)さん…背中から学ぶ方が多かった。「ダンスの花組」「ショーの花組」として、精神的に鍛えていただきました。月組では、天海祐希がトップになる頃で、若い香りが満載(笑い)。若葉でした。

2組での経験は財産に。

真琴 花組では男っぽい男役でしたが、月組で女役を。組替えがなければ、長所も短所も分からないままだったろうな。人生変わったな、とも思います。

組子の立場から見ても、個性はやはり違った。

真琴 当時の花組には将来有望株がそろっていて。先輩、同期もですが、後輩にも紫吹淳、香寿たつき、匠ひびき、そして姿月あさと…。上も下もスターの宝庫の優秀な期、私たちの期はサンドイッチの中身状態ですよ(笑い)。振り付けの先生に、同期の愛華みれと「あなたたちはサンドイッチの中身」と言われ…。

その言葉に「サンドイッチって中身が一番おいしいんじゃ…」と闘志に火がついた。そんな折、月組異動に。月組の思い出は、真琴自身の入団時とも重なる。

真琴 (入団の85年当時は)月組トップの大地真央さんが辞められようとしていて、剣幸さん、涼風真世さんら芸達者な方が多くて、「芝居の月組」との印象がありました。それが、自分がトップとなった時代に「都会的」と。いい意味にも、悪い意味にも聞こえて悩んだ時もありました。

組の伝統は受け継がれるが、イメージは都度変わる。複数パターンある今公演も多彩な“顔”がある。

真琴 名曲、名場面のオンパレードも。相手役さんと(コンビが)そろっているペアが、花や月にいる。元男役って、言葉では割り切れない分野。特別な存在。その上を行く娘役さんの存在があって、その技量の見せ合いっこをする。

懐かしい曲、場面…真琴自身も楽しみだという。

真琴 年齢を重ね、仕事現場では先輩の立場になった。でも、OGの先輩方とご一緒させていただけば下級生でいられる。細胞によろしい(笑い)。でも今回は下(後輩)も出るので、しっかりしなきゃ!

今、星組の礼真琴、花組の柚香光、月組の月城かなと、95期3人がトップにそろう。真琴の月組トップ時代、花組が愛華みれ、雪組は轟悠、星組が稔幸と、71期の4人が同時に就いた。

真琴 同期と一緒だと心強いですよ。新しい劇場のこけら落とし公演があるときで、4人で集まって話して。同期だから共感でき、舞台も刺激を受けながら。

専科へ移って劇団へ残った轟も先日、退団した。

真琴 普通の精神では35年間男役として先頭を走り続けるのは難しい。すごく強い精神を持ってきたと思います。(今年、ディナーショーで共演し、轟の)芯に揺るがない宝塚の歴史があると感じて。彼女の血を後輩に分け、献血していってほしいって(笑い)。

その轟と“20年後の約束”をしたという。

真琴 ツエをついていても、水着着たりして(ディナーショーを)やろうって! ツエがステッキに見えるような、すてきな年の重ね方をしたいと思う。

私生活での変化は-。

真琴 おうちでごはんを作ることが、こんなにストレスとは…。何作ろう? 何食べよう? とか。食べる喜びって、人との会話で増すことが、よ~く分かりました。

今回、仲間やファンが集まる機会を得た。

真琴 花、月組の100周年ですが、見に来るお客様にもそれぞれの歴史があると思う。100年の歴史の中、自分の“時”を探しに来ていただけたら。

<OGが多数集う「最高の瞬間」>

◆宝塚歌劇 花組・月組100th anniversary『Greatest Moment』

出演者は初風諄、榛名由梨、安奈淳、高汐巴、剣幸、若葉ひろみ、こだま愛、安寿ミラ、涼風真世、真矢ミキ、愛華みれ、真琴つばさ、姿月あさと、森奈みはる、麻乃佳世、風花舞、彩輝なお、瀬奈じゅん、大鳥れい、霧矢大夢、壮一帆、彩乃かなみ、桜乃彩音、蒼乃夕妃、蘭乃はな、珠城りょうら。特別出演として現役生の凪七瑠海、紫門ゆりやら。

▼花組・月組ALLバージョン

1、2幕とも花組・月組で上演された作品や場面から、歌・ダンス・トークを交えたコンサート形式で。

▼花組バージョン▼月組バージョン

1幕は当該組のどちらかに焦点をあてた構成。出演者も複数パターンあり、組み合わせも変更。2幕はジャズ、シャンソン、タンゴなどを組の枠を超えて上演する。

☆真琴(まこと)つばさ 11月25日、東京都生まれ。85年に宝塚歌劇団入団、花組配属。93年に月組。97年月組トップ就任。哀愁を携えた二枚目路線で人気を得つつ、「風と共に去りぬ」のスカーレット、「ミー&マイガール」のジャッキーなど女役も好演した。01年退団。女優に転身し、舞台、テレビなどで活躍。バラエティー番組でのトークには定評がある。愛称「マミ」。