星組人気スター愛月ひかるの退団公演「柳生忍法帖」「モアー・ダンディズム!」が、東京宝塚劇場で上演されている。兵庫・宝塚大劇場での公演は11月1日に千秋楽を迎え、最終日にはサヨナラショーも上演。憧れの演目に挙げ続けた「うたかたの恋」で、愛し続けた本拠地に別れを告げた。宝塚を終え、東京公演は20日に開幕し、12月26日まで。愛月は、東京千秋楽をもって退団する。

あこがれの「うたかたの恋」に軍服姿で臨んだ愛月ひかる(右)と、相手役を務めたトップ娘役の舞空瞳
あこがれの「うたかたの恋」に軍服姿で臨んだ愛月ひかる(右)と、相手役を務めたトップ娘役の舞空瞳

「皆さん愛しています」

終幕後、カーテンコールにこたえ、星組トップ礼真琴と幕前に現れた愛月は、タカラジェンヌの正装、緑の羽織はかま姿で、満面笑みで客席に呼びかけた。

宙組から専科を経て星組に属して2年。劇団きってのダンサーでもある礼を最も近くで支えてきた。「こっちゃん(礼)と一緒に踊っていると、私まで踊れる気がしてきて、いつか骨折するんじゃ? と思っていました」。ジョークをまじえながら、星組生として卒業できることに感謝した。

男役15年。2歳から愛したタカラヅカのホームグラウンド最後の日。サヨナラショーも上演され、念願をかなえていた。

オーストリア皇太子ルドルフの悲劇を描いた名作「うたかたの恋」から、星組トップ娘役舞空瞳を相手に歌い舞った。愛月が「憧れの演目」に挙げていた作品。皇太子の軍服姿で舞空を抱えた。

りりしく、麗しい立ち姿。男役の「品」「品格」を提示し続けてきた愛月は、自身のファンからのイメージを「白」と語っていた。この日も、その軍服から着替えても、真っ白な衣装。トップ礼ら仲間のセンターに立ち、ショーの最後も「白」で締めた。

そして、最後の大階段下り。選んだのは、自身も宝塚ファンらしく、正装のはかま。同期の宙組スター芹香斗亜らから花束を受け取り、愛月は「今こうして、たくさんのお客様の前で卒業のあいさつができ、本当に幸せです」。星組全員で公演を完走できたことに感謝しつつ「宝塚に出合ってから、宝塚が私のすべてでした」と、2歳で初観劇して以来、魅了された夢の世界への思いも口にした。

「こんなにも夢中になれて、自分のすべてをかけられる場所に出合えて幸せでした」。宝塚愛の強さゆえ、自転車にも乗らず、買い物にも配慮し、タカラジェンヌとして、男役としての「品格」を求め続けた。それゆえ、葛藤もあった。

「でも、常に宝塚が好きという思い、宝塚の男役を極めたいという思いがなければ、今の私は存在しなかった」とも吐露。残る東京公演へ向けて「男役に完成はありません。東京公演最後の日まで、自分の男役像を作り上げてまいりたい」との決意も示し、男役の「最終形」を求めて、東京で、オーラス公演に臨んでいる。【村上久美子】

自身のファンからのイメージを「白」と言い、サヨナラショーでも本領を発揮
自身のファンからのイメージを「白」と言い、サヨナラショーでも本領を発揮

☆愛月ひかる(あいづき・ひかる)8月23日、千葉県市川市生まれ。07年入団。宙組配属。新人公演4回主演。16年「エリザベート」で暗殺者ルキーニ、17年「王妃の館」でコミカルな中年男性、「神々の土地」で怪僧ラスプーチン、18年「不滅の棘」で不死の男など、多彩な役を経験。19年2月専科へ、同11月星組。身長173センチ。愛称「あい」「ちゃんさん」。