星組公演「ディミトリ~曙光に散る、紫の花~」「JAGUAR BEAT」は、11月12日に兵庫・宝塚大劇場で開幕し、12月13日までの宝塚公演を完走した。トップ礼真琴は、国の間で揺れつつも愛を貫く“人質王子”を好演し、ショーでは俊敏かつ勇猛なジャガーにふんしてダンス、歌、芝居と高いスキルで3拍子そろった本領を発揮した。来年1月2日からは東京宝塚劇場での上演を控える。

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「勇気とは何か」。芝居のキャッチコピーを体現するように、ジョージアの民族衣装をまとい、礼は難易度の高いジョージアン・ダンスをおりまぜ、王子の苦悩、希望を表現した。

芝居の脚本・演出は生田大和氏。13世紀のジョージア(旧グルジア)を舞台にした並木陽氏の小説「斜陽の国のルスダン」をミュージカル化した。

礼は、人質としてジョージア国へ送られたルーム・セルジュークの王子ディミトリにふんし、女王となるルスダン(舞空瞳)と結婚。愛を貫く物語で、核のひとつが超人的ステップのジョージアン・ダンスだ。生田氏は、このダンスを「シンプルに格好いい」と考え、宝塚の作品に取り入れる手段を考えた。

「トップスターが一番、踊りこなさなければいけない。表現の手段として、このダンスを習得してくれる人は? と、探していた」

群を抜く歌唱力、硬軟自在の演技力とともに、礼はダンスの技量も抜群。生田氏は「礼真琴さんのあらゆるテクニックを身につけ、かつ空間を切り裂く」技量にひかれ、今作を進めた。

ルスダンにふんしたトップ娘役舞空瞳は、まっすぐ進む女王を情熱的に表現。礼と同期の瀬央ゆりあは、ジョージアを侵略する亡国ホラズムの王ジャラルッディーンを演じた。

本拠地作としては今回から星組に加わった暁千星が、前王への忠誠心ゆえにディミトリへの憎しみを募らせるジョージアの副宰相を熱演。今作を最後に花組へ復帰する綺城ひか理は、ディミトリがあこがれる前王ギオルギにふんした。

ショーでも礼、舞空のダンサーコンビに、劇団有数のダンサー暁が加わり、現体制の星組の充実ぶりをアピール。ショーは、暁の場面から始まる。演出の斎藤吉正氏は「礼真琴という完全無欠のスキルも持ったスターを頂点とした星組。もともと華やかな星組に、新しいエンジンが加わった」と期待感を語った。

宝塚大劇場の22年を締め、新年は東京宝塚劇場の幕開けを担う。【村上久美子】