大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。「新選組」「真田丸」に次いで3作目となる三谷幸喜作品。舞台は鎌倉時代、源家を支えた小栗旬演じる北条義時を軸に御家人たちの生き残り合戦が繰り広げられる。といっても今はまだ大泉洋演じる源頼朝が生存している段階なので、まだまだ前半戦といったところだろうか。

前半戦の主役の1人として、菅田将暉演じる源義経が挙あげられる。大河をはじめ、何度も描かれてきた人気者。これまではヒーロー的な描かれ方が主であったが、今作では戦の天才としての残酷さがとりわけ目立ち、イメージが大きく変わった。そしてあまりにも早い退場。人気俳優が演じる人気の人物、もっと引っ張ってもいいのかとも思うが、今回に関してはそこがまたいい。

それはまるでAmazonプライムで配信された人気恋愛リアリティー番組「バチェラー」シリーズをどこか想起させる。バチェラーではハイスペックな独身男性を女性たちが取り合うが、こちらでは鎌倉殿(源頼朝)を、そして今後はその権力を皆が取り合うことが予想される。

さらに通常の群像劇ではありえない、メインとなる登場人物たちの度重なる退場劇。序盤に片岡愛之助が、さらには佐藤浩市に松平健、極めつけは新垣結衣と、主演クラスの俳優が次々と画面からいなくなる。史実通りといえばそうだが、さすが三谷幸喜とうなる展開が毎週のように続く。タイトルにもなっている13人。誰が最後まで本当の意味で残るのか、これからますます目が離せない。

そこで、今回紹介したいのはドラマに出演している小池栄子(41)。主人公・義時の姉であり、頼朝の妻・北条政子を演じる。始まった当初は多少コミカルな感じだったが、頼朝と結婚をしてからは徐々に迫力ある存在になりつつある。鎌倉時代の影の支配者と言われ、今後必ずキーマンとなる政子をどう演じていくのか、今から楽しみである。 そんな小池だが、アラフォー以上の世代にとっては優香や井上和香、MEGUMIなどとともに、90年代を代表するグラビアアイドルだった。グラビアと並行して女優活動も行う中、映画にドラマに舞台とコンスタントに出演。10代から一線で活躍する女優たちと比較すると少し物足りない中、2008年の映画「接吻」が転機だろうか。当時すでにスターだった豊川悦司、仲村トオルを差し置いて堂々の演技を披露し、数々の映画賞を受賞した。

その後、三谷作品はじめ劇団☆新感線やKERA・MAPなど女優としての仕事の質がグッと上がる。さらには「カンブリア宮殿」や「クレイジージャーニー」などで、村上龍や松本人志、設楽統を相手に安定したトーク力も発揮した。

恒例のサッカー選手に例えると、アンダー世代から活躍はしてはいたものの、後に同じく日本代表になる内田篤人や乾貴士に比べると地味な存在の吉田麻也に似ているのではないだろうか。吉田は名古屋、VVVフェンロ、サウサンプトン、サンプドリアと全てのチームで結果を残し、どこの国にいても、誰と組んでも存在感を示すことで日本代表の要になった。

そして11月、カタールの地を踏むことになれば3大会連続出場、歴代ナンバーワンDFと呼ばれる日も近い。その時期にはドラマも終盤、彼女もまた大女優の仲間入りを果たしているのかもしれない。

◆谷健二(たに・けんじ)1976年(昭51)、京都府出身。大学でデザインを専攻後、映画の世界を夢見て上京。多数の自主映画に携わる。その後、広告代理店に勤め、約9年間自動車会社のウェブマーケティングを担当。14年に映画「リュウセイ」の監督を機にフリーに。映画以外にもCMやドラマ、舞台演出に映画本の出版など多岐にわたって活動中。今年は2月に演出舞台「政見放送」を上演、5月20日には最新監督映画「さよならグッド・バイ」が公開された。8月には演出舞台「ハイスクール・ハイ・ライフ」の製作も決定している。カレー好きが高じて青山でカレー&バーも経営中。