日本上演30周年を迎えたミュージカル「レ・ミゼラブル」(東京・帝国劇場)でコゼット役を演じる乃木坂46生田絵梨花さん(20)の意気込みの言葉です。先週、舞台を見てきましたが、乃木坂でのアイドル活動とはまたひと味違う素晴らしいコゼットぶりで、30周年にふさわしい感動をくれました。

 不遇な少女時代を経て、ワケありの主人公ジャン・バルジャンに何不自由なく育てられたお嬢様。お人形のように美しく、気品と清潔感あふれる生田さんの個性はコゼットにぴったりで、登場するだけで目を引きます。

 ドイツ生まれで語学堪能、音大でピアノも声楽もこなす乃木坂46の“ミス・パーフェクト”。そんなプロフィールを持つ生田さんのコゼットは、かわいいだけではない教養や凜(りん)とした気品が漂っていて、まじめな学生マリウスが一瞬で恋に落ちるのも納得でした。高音でもよろけない、のびのびとした歌声は帝劇の隅々まで響きますし、誰かとのハーモニーでも、コゼットの意思がしっかりと客席に届きます。

 コゼットは「レミゼ」の中でも難しい役どころです。他人の家で冷遇された少女時代はあるものの、困難だらけの登場人物たちの中で唯一、たっぷりの愛情で裕福に育った守られキャラ。いわば“勝ち組”で共感を得にくいのです。むしろ、ゲスい親に人生を翻弄(ほんろう)され、マリウスへの恋もかなわないまま銃弾に倒れるエポニーヌの方が見せ場も多く、客席のハートをごっそり持っていきがちです。

 でも、生田さんのコゼットは、ちゃんと応援しがいがありました。動乱の中、会えないマリウスへの思いを歌う「プリュメ街」というナンバーがあるのですが、美しい歌唱の中に、コゼットなりの苦悩の道のりがしみじみと見えてきて、こちらも幸せを願うバルジャンの気持ち。マリウスを見る笑顔はいかにもうれしそうでわくわくするし、死んでいくバルジャンから手紙を受け取りぽろぽろ泣く顔も美しい。なんとも魅力的なコゼットでした。

 生田さんにとって、子供のころからの夢だったというミュージカル。コゼット役は、「オーディションを受けたい」と乃木坂46の運営サイドを説得し、自力でつかみました。87年に斉藤由貴さんら3人が演じて以来、ミュージカル界、歌謡界などさまざまな若手が演じてきた役。「しっかり引き継ぎ、新しい空気感を」という思いは、しっかり形になっていたと思います。

【梅田恵子】(B面★梅ちゃんねる/ニッカンスポーツ・コム芸能記者コラム)