9月30日に放送されたNHK連続テレビ小説「ひよっこ」最終回の視聴率です(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。全156話のシーズン平均20・4%で大台に乗せ、有終を飾りました。

 シーズン最高視聴率は9月28日の24・4%。週平均が20%に届かず、不振が伝えられた序盤がうそのような展開です。物語の舞台が赤坂「すずふり亭」「あかね荘」に移ってから面白くなったとか、手薄だったイケメン枠に竹内涼真が登場してラブストーリーが活気づいたとか。内容的にさまざまな要素が伝えられていますが、カンフル剤となったのは、NHK上田良一会長の「歌詞が意味不明」発言だったのではないかと思っています。

 発言があったのは5月の定例会見でのこと。伸び悩む視聴率についての質問を受け、「内容は素晴らしい」とかばう流れで桑田佳祐さんの主題歌「若い広場」に触れ「軽快なメロディーが朝のすがすがしさに合って素晴らしい。ただ、確かに歌詞は読み取りにくくて聴き取りにくく、なかなか難しい」と語りました。

 昭和歌謡や昭和レトロをちりばめた歌詞が「深い」「難しい」とネットで注目されていることを念頭にした発言。型通りの絶賛でうそ臭く伝わるより、オリジナルな見解で作品への愛着を語るバランス感覚も感じました。新聞各社もそんな文脈で伝えていましたが、SNSなどで拡散されるうちに見出しの「意味不明」が独り歩きし、「批判」「炎上」という物騒な広がりに。あの場では、ミニチュア映像から総合視聴率まで、涙ぐましくPRしていただけにちょっとお気の毒でした。

 一方で、どんな形でも話題になったもん勝ちのSNS時代では、作品に目を向けさせる機会にもなりました。翌6月からちょうどヒロインが「すずふり亭」で働き始め、おかしな人たちが集う「あかね荘」に入居し、島谷さん(竹内涼真)への初恋も始まるタイミング。年齢、性別、背負ってきた事情など、さまざまな登場人物の人生がカラフルに交錯していく「ひよっこ」らしさがいよいよ、という分岐点だっただけに、結果論として、いいイントロになったと思います。

 視聴率もこのころから上がり始め、6月下旬には初の週平均20%超えをマーク。7月20日に21・4%を記録して以降、最終回まで63話連続で20%超えとなりました。

 そもそも朝ドラの視聴率は、「前作の影響を受けることがはっきりしている」(木田幸紀放送総局長)とのこと。前作の「べっぴんさん」が残り3週で17%台を記録することもあったことを考えると、「ひよっこ」はよく盛り返したと思います。取材会で「放送が始まれば、視聴率のことも言われると思う。作品を背負っていると常に感じる」と朝ドラヒロインの覚悟を語っていた有村架純さんは、クランクアップで「いろんな自分との戦いがあった」と涙。たくさんの人に見てもらえて、頑張りが報われて何よりでした。

 「前作の影響を受ける」法則からすると、いいバトンを引き継ぎ本日スタートした「わろてんか」が気になるところ。もし伸び悩んだ時は、会長に何か言ってもらうのも手かと思います。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「B面★梅ちゃんねる」)