ジャニーズ事務所を退所した元NEWSの手越祐也(32)が先ごろ会見を開き、決断の背景と今後のビジョンを語った。枠にはまらない個性は大いに話題になったが、4人でのステージがいつの間にか終わっていたファンの気持ちを思うとやるせない。おそらく、4人で立った最後のステージである2月21日の「ミュージックフェア2800回コンサート」(東京国際フォーラム)を取材したので、メモしておきたい。

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コンサートは、加山雄三、森山良子、谷村新司、南こうせつ、さだまさし、THE ALFEEが結成したスペシャルバンド「ロックチッパーズ」を目玉に、高橋真梨子、徳永英明、平原綾香、三浦大知、Little Glee Monsterら14組34名のトップアーティストが集結する超豪華版。伝統ある番組の記念コンサートに、ジャニーズから唯一参加したのがNEWSだった。

特にNEWSのファンではない人たちも大勢いるイベントでの公開収録は、会見で手越が切望していた「アウェー戦でのパフォーマンス」そのもの。歌唱で勝負の場を得た彼は生き生きと本当に楽しそうで、実際、水樹奈々と歌った「絶対的幸福論」では、パワフルボイスの競演で会場の注目を一身に集めていたと思う。80代になっても歌の世界で第一線にいる加山ら「ロックチッパーズ」の圧倒的なステージを、カメラには映らない場所から食い入るように見ていた横顔も印象に残る。

持ち前の明るさも、公開収録を盛り上げていた。

2月21日は、5000人収容のホールでまだコンサートをギリギリできていた時期。主催側がすべての客にマスクを配り、5000人のマスク姿で埋まった客席は少々重苦しい雰囲気があった。トークコーナーで戸惑いを隠さないベテラン歌手も多かった中、手越は増田貴久の潔癖性トークを拾ってウケていたり、水樹奈々から「楽屋で『おねえさん、歌うまいっすね』と言われて驚いた(笑い)」と8年前のエピソードを暴露されて平謝りしたりと、カジュアルに会場を沸かせていた。

私生活はスキャンダルが絶えなかったが、少なくとも歌とトークのエンターテインメントで人の期待を裏切ったことはないはずで、そこを信じてファンは応援し、根っからの音楽事務所であるジャニーズ事務所も、再三のスキャンダルから必死に守って表現の場を与え続けてきたのだと思う。

だからこそ、あと1年契約が残っていたにもかかわらず、「3月に決めて6月に退所」という急な形でファンと事務所の願いを放り出してしまった結果に、タレントとして行儀が悪い後味が残って残念だ。「アイドルの1年は本当に大切なもの」という会見の言葉は理解できるが、ここより大切な1年はなかったはずだ。コロナ禍で3月からの全国ツアーが中止になってしまった痛恨の事情があるからこそ、むしろ残りの1年、テコでも動かないしぶとさをもって事務所を説得し、ファンに4人でのラストステージを見せる道を探ってほしかったと思うのだ。

会見では、行動あるのみのバイタリティーやまっすぐなボランティア精神を痛快に感じた一方で、「SNSで影響力を最大化」「ジャパニーズカルチャーを世界に持っていって戦う」など、何かの投資系セミナーを見ているようにも感じた。聞いていて、分かるような、さっぱり分からないような。トータル、間違って組織に身を置いてしまった真の自由人というのが正直な印象で、今後の自分の社内遊泳の仕方も、ちょっと考えてしまった。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)