【先週の言葉】「自粛明け後、初めての制作発表会見。やれる限りのことはやった」

来年2月14日から始まる宝塚歌劇団星組公演「ロミオとジュリエット」の制作発表会見(11日)に関して、終了後関係者が語った言葉です。宝塚がこの手の記者発表会を行うのは自粛明け後初めてですが、感染対策とスムーズな進行を両立させた独自の会見方式は、取材陣の間でも「画期的」「現状これがベストでは」と話題になりました。

会場は都内ホテルの宴会場。記者エリアは十分に距離をとっていすが並べられ、進行係が「会見開始まで私語はご遠慮くださいますよう」と、エレガントにアナウンス。この場に込めた思いが取材陣にも伝わり、いい一体感と静寂が保たれました。

最も密になりやすい写真撮影タイムにも工夫がありました。被写体の近くで無秩序にカメラが集まらないよう、撮影者を20人ずつ「A」「B」2つのグループに分け、それぞれ撮影を行うシステム。受付で「A○番」「B○番」などランダムに番号札が渡され、あらかじめ床に等間隔でバミってある番号の立ち位置から撮影する流れです。

通常、カメラ位置は不公平がないよう先着順か抽選で決められることが多いのですが、どちらも結局「列」や「密」が生まれてしまうんですよね。その点でも、受付時にランダムに札を配ってしまった宝塚方式は画期的でした。場所取りが命、みたいな現場ではないからできることとはいえ、丁寧な説明で各社を納得させていた手腕はなかなか。宣伝関係者は「端の方になった方から不満が出ることも覚悟していましたが、皆さんスムーズに対応していただき、ありがたかったです」。

星組トップコンビ、礼真琴と舞空瞳の対応も完璧でした。カメラマンが目線や笑顔のリクエストで発声する必要がないよう、端から1人ずつ目線を配り、20人×2で同じポーズ、同じ笑顔をキープ。手間に見えて、どんなイベントよりさくさく進むフォトセッションとなりました。

宝塚によれば、一連の流れは何かを手本にしたわけではなく、「一気呵成(かせい)に」オリジナルで考えたもの。コロナ禍での苦い経験と、「清く正しく美しく」のDNAがなせるわざと感じます。最近の芸能イベントは主催者の意識によって感染対策もまちまちになってきているだけに、初心をきっちり踏む現場のありようが痛快でした。

芸能取材から「現場」がなくなるという、考えもしなかった事態に戸惑いまくった2020年もあとわずか。来年こそ、表現者が自由にパフォーマンスし、大いに語り、それを当たり前に取材できる日常が戻ることを願うばかりです。

星組公演「ロミオとジュリエット」は、来年2月14日~3月29日まで宝塚大劇場、4月16日~5月23日まで東京宝塚劇場。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)