【今週の言葉】「総力を挙げて朝の戦いに挑みたい。どうしても負けられない戦いです」

秋から“朝の大改革”として新情報番組「THE TIME,」(月~金曜午前5時20分~同8時)をスタートさせるTBS瀬戸口克陽編成局長の言葉です。16日、オンラインで行った10月改編説明会で意気込みを語りました。

ほかにも「戦いに打って出なければならない」「TBS朝の戦いを盛り上げていきたい」など、冒頭あいさつだけで「戦い」のワードを4連発。総合司会にエースアナウンサー安住紳一郎(金曜は俳優香川照之)を起用し「朝を勝ち切る」と、本気度が伝わってきます。

1日のスタートとして視聴動向の流れを作る朝ワイド番組は、GP帯(午後7時~同11時)を含む全日視聴率(午前6時~深夜0時)に大きく影響する重要な存在です。

瀬戸口局長は「朝ご覧になったチャンネルをオフした人が、帰宅した時につける率が高いという相関関係もある」。出掛けた人の帰宅後までデータ化するほどシビアな視聴率争いに驚かされますが、その「あさチャン!」は7年間他局に大きく水をあけられたまま。日本テレビ「ZIP!」、テレビ朝日「グッド!モーニング」、フジテレビ「めざましテレビ」が7~8%台の戦いを繰り広げる中、ざっくり4%台が定位置になっています。打開策にいよいよエースアナを登板させる大勝負とあって、「負けられない戦い」という覚悟がよく分かるのです。

そもそもTBSにとって、「朝」は最大の弱点といわれてきた歴史があります。06年10月期に「みのもんたの朝ズバッ!」が「朝のホットライン」(草野仁)以来18年ぶりにトップを獲得するまで、いくつもの番組を立ち上げては打ち切るという大低迷も経験しています。当時TBSから提供された「朝ズバッ」以前の番組変遷リストは以下の通りです。

▼90年4月~同9月「ザ・ウェーブ」(草野仁)

▼90年10月~94年9月「ビッグモーニング」(生島ヒロシ)

▼94年10月~96年5月「フレッシュ!」(梶原しげる)

▼96年5月~99年3月「おはようクジラ」(渡辺正行)

▼99年4月~02年3月「エクスプレス」(とよた真帆)

▼02年4月~03年3月「おはよう!グッデイ」(露木茂)

▼03年3月~05年3月「ウォッチ!」(土井敏之)

13年間で7本の番組が作られ、半年、1年で終了した番組もあるほか、タレントや女優を司会に起用した試みなど、文字通り試行錯誤の連続という感じです。悲願の朝枠強化を達成した「朝ズバッ」も、みのが次男の不祥事で13年秋に降板し、翌14年3月に終了。「あさチャン」にバトンタッチして以降、再び低迷状態となっていました。

なぜTBSは朝が弱点なのか、さまざまな分析があると思いますが、以前、同局のベテランプロデューサーから聞いた「ウリになる専門分野がない」という言葉が印象に残ります。

ひと昔前で言えば、列島中継の「ズームイン朝」(日テレ)や、新聞読みの元祖「やじうまテレビ」(テレ朝)など、独自性で一定の視聴者をつかんだ流れが他局にはあります。芸能エンタメ系に強いというウリがある「めざまし」が今も固定客をつかんでいるのも同様ですが、そういうウリとなるものが、TBSにはないという指摘です。

「朝ズバッ」の成功は、「みのもんた」という強キャラそのものが番組カラーになったのだと思えば納得で、実績のあるスターキャスターにあれこれ託してもり立てるやり方のほうがTBSには合っているのかもしれません。そう考えると、安住アナという無双のスターアナを番組カラーにする今回の一手は、非常に的を射ていると感じます。

即効性のあるドラマと違い、帯番組は結果がともなうまで時間がかかるもの。スピード快挙といわれた「朝ズバッ」初のトップ獲得も、番組スタートから1年半でのことでした。瀬戸口局長は「朝の視聴習慣を変えるのは本当に大変なことだと身に染みて実感しているが、戦いに打って出ないといけない」。安住アナ率いる「THE TIME,」はこの記録を抜き、TBS積年の弱点を克服することができるでしょうか。個人的には興味津々なので、秋を楽しみにしたいと思います。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)