秋ドラマもいよいよ大詰め。ラストスパートに向け、どの作品も物語のギアがぐっと上がってきました。

豪華キャスト競演で話題を呼んだ7月期の「VIVANT」(TBS)に続き、今期もトリプル主演、クアトロ主演などスター俳優詰め合わせ系のデコラティブな企画が目立ちますが、個人的には、登場人物をコンパクトに絞り、地に足付けてキャラクターの魅力を描いている深夜ドラマばかり継続視聴していた気がします。

土ドラ「あたりのキッチン」(C)フジテレビ
土ドラ「あたりのキッチン」(C)フジテレビ

「あたりのキッチン!」(フジテレビ系、土曜11時40分)は、そんな作品のひとつ。絶対味覚を持つ人見知りヒロインが、定食屋のアルバイトをきっかけに人とかかわっていく様子を描きます。登場人物は、ヒロイン(桜田ひより)、定食屋の店主(渡部篤郎)、その息子(窪塚愛流)の3人に、お客さん役のゲスト俳優くらい。番組公式ページの人物相関図が超シンプルですが、絶対味覚で表現するヒロインのまごころと、お客さんのちょっとしたドラマが交錯し、毎週ほっこりした物語を見せてくれます。

ドラマイズム「マイホームヒーロー」(C)TBS
ドラマイズム「マイホームヒーロー」(C)TBS

TBS系「マイホームヒーロー」(火曜深夜)も、キャラクターに集中して見られる快作です。娘を守るため、平凡なお父さんが半グレ彼氏を殺害するところから始まるクライムサスペンス。犯行を隠すために何でもする佐々木蔵之介×木村多江夫婦と、追い詰めてくる半グレ組織というシンプルな構図で、深夜枠ならではのエグい描写、絶体絶命のスリルがぐいぐい来るんですよね。キモこわすぎる吉田栄作がすぐそこまで来ていて、今後の展開が気になります。

火ドラ★イレブン「時をかけるな、恋人たち(C)フジテレビ
火ドラ★イレブン「時をかけるな、恋人たち(C)フジテレビ

今期いちばん楽しみに見ているのは、SFラブコメディー「時をかけるな、恋人たち」(フジテレビ系、火曜11時)。違法タイムトラベラーを取り締まるパトロール隊のお話で、吉岡里帆×永山瑛太のコンビネーションが大いに笑えます。パトロール隊の5人と、各話の違法トラベラーでほぼほぼストーリーが進み、ロジカルなつじつま合わせが起こすちょっとした奇跡に、SFらしい切なさと輝きがあります。

「スター俳優詰め合わせ」や、SNS重視の「考察系」など、ここ数年のトレンドは「VIVANT」が記録した最終回視聴率19・6%でひとつのピークに。その反動で、そろそろ4番打者ばかりのキャスティングにも疲れてきたというか、考察疲れも感じるというか。「あたりのキッチン」のような、考察要素などひとつもないド直球の人間ドラマにホッとする秋を、残り少し楽しみたいと思います。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)