「スタジアムの女王」渡辺美里(50)がライブを締めくくった。

 1曲目は「サマータイム・ブルース」。美里が手にしたうちわが、直前まで上空をおおった雨雲を吹き飛ばしたかのように、強い雨が上がった。

 2曲目は「恋したっていいじゃない」、3曲目は「神宮花火大会は高校時代から毎年通っていました。いつかここで歌いたいなとイメージして作りました」という「みんないい夏」からかつての「熱闘甲子園」のテーマ曲「太陽は知っている」と夏のナンバーをメドレーした。

 開場後の雨のため、2度、3度とずぶぬれになった観客を励ますように「忘れられない1日、ドラマチックな一夜になれば」と「10yers」を歌った。ロックナンバーの「今夜がチャンス」、代表曲「My Revolution」と続けると、客席に笑顔があふれた。

 最後は「夏が来た」。数多くのライブを締めくくってきた定番に合わせて、スコアボードのビジョンにカウントダウンが始まった。午後7時30分ぴったりに歌い終えると、花火が打ち上がった。実はステージ上に美里には見えるようにデジタル時計が設置されていた。打ち上げのタイミングを計りながら、歌いきる。幾多の演出を完成させてきたスタジアムの女王ならでは神業だった。

 「花火、楽しんでね!!」と手を振ると、会心の笑みを浮かべてステージを降りた。西武ドームで20年連続公演を成功させた女王が、スタジアムライブを行うのは11年ぶり。出演が決まると、イメージを取り戻そうと、車で神宮球場を通りかかると、路肩に寄せて写真を撮りながら、じっとみつめた。「すいません、止まらないでください」の警備員に注意された。「すいません」と素直に謝りながら、当日のブログにはちゃめっ気たっぷりで書いた。「8月20日になれば、何者か分かってくれるかな」。

 真夏のライブのエネルギーになったのは、リオ五輪の熱戦だった。印象に残る場面を問うと、敗者の言葉や毅然(きぜん)とした姿を挙げた。「吉田(沙保里)さんもそうですけど、同じ名前の(柔道52キロ級銅メダリスト)中村美里さん。継続して努力してきた人にしかわからないドラマですよね。感動しました」。

 継続は力なり。31年歌い続けているからこその言葉だった。【久我悟】