阪本順治監督(58)が9日、東京・有楽町朝日ホールで行われた、キノフィルムズラインアップ発表会で、新作「エルネスト」(10月公開)の改名を宣言? した。

 「エルネスト」は、キューバの革命家チェ・ゲバラとともに戦った、実在の日系ボリビア2世フレディ前村の人生を描いた日本・キューバ合作映画で、オダギリジョーが全編スペイン語の演技に挑戦し、キューバと日本で撮影された。

 阪本監督は、ダイジェスト映像が流れた後、登壇するなり「何か面白いことを言えと言われたんですけど…この映画で、なかなか面白いことは言えない。誰が見るんですかね、この映画?」と言って、集まった映画メディア、業界関係者を笑わせた。

 昨今、ストーリーラインや結末が分かりやすい映画が大ヒットする一方で、時代ものや史実を描いた作品は、なかなかヒットしにくいのが現状だ。阪本監督のジョークは、そのことを踏まえたものとみられるが、その上で「そういう時の方が、僕は勝ってきた。自信があります」と宣言した。そして「さらなる大ヒットを目指して、今さらながら題名を変えようかな?」と言って、以下の3タイトルを口走った。

 <1>ゲバラから前村が名前を授けられたので「君の名は。エルネスト」

 <2>「シン・ゲバラ」

 <3>「エ・エ・エルネスト」

 興行収入245億円を超えた大ヒットアニメ映画「君の名は。」、同80億円を突破した特撮映画「シン・ゴジラ」、米アカデミー賞を席巻したミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」を、もじったタイトルとみられる。これには、司会を務めたキノフィルムズの武部由実子社長も驚き「本作のタイトルは『エルネスト』です!!」と、慌てて訂正を入れた。

 阪本監督は、あいさつの中で、オダギリがスペイン語の中でも、フレディ前村が生まれたボリビア・ベニ県で使われるスペイン語を習得しなければいけなかったことを明かした。その困難さを「スペインの俳優が日本映画に出る時、いきなり大阪弁を覚えさせられるみたい」と説明した。

 また現地の習慣で、ロケ地で朝、集合した時、女性のスタッフと撮影に入る前にハグしてキスしあわなければならず、日本人のスタッフ27人とキューバのスタッフ100人がハグとキスをしあうため、撮影に入るまでに6、7分かかったエピソードを明かした。キューバのスタッフは野球への関心が高く、WBCに参戦している日本の野球選手の名前も、フルネームで知っており、愛好的に接してくれたという。

 阪本監督は、最後に「映画は作品でもあり、商品でもあります。でも、勝てる場所でしか撮らない、自分を安全な場所に置いて撮るのは嫌。消耗品にだけはなりたくない」と、真面目に大ヒットを誓った。【村上幸将】