自らを「テレビタレント」と称する中山秀征(50)の新連載「テレビが大好き」が本日からスタートします。中山が見て、体験してきたテレビ業界の表と裏、過去、現在、未来を5回にわたって語ってもらいます。第1回は、現在のバラエティー番組や情報番組の基本をつくった日本テレビ系「DAISUKI!」について。当時、街歩きはまだ珍しく、等身大の姿で見せた買い物企画など、高視聴率を誇った番組の裏側を語ります。

 「DAISUKI!」は深夜なのに、14・7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)とかあり得ないような視聴率を記録した番組でした。僕と松本明子さんと飯島直子ちゃんが、どこかに行って遊ぶというのがコンセプト。後に同じような番組が増えたのも、あの番組の成功があったからだと思います。

 僕が25歳で松本さんが26歳、直ちゃんが24歳。年も近かったので、すんなり入れました。直ちゃんとは初めてだったけど、彼女の突き抜けた明るさを初日で実感しました。当時は、アイドルが嫌なところは見せない、キャラクターはつくる、発言は台本通りということがまだ多い時代でした。しかし、直ちゃんはバスケットボールの3ON3をやった時、ゴールしたら「キャー!」って僕に抱きつくんですよ。今でこそ、ハグとかあるけど、そんな人いなかったんです。僕、その時、固まりましたからね(笑い)。うれしければ、うれしいと言うし、つまらなければつまらないと言う。それを徹底的に、つまらないと言われないように気遣う松本さんという構図で、裏側の裏側を見せるっていう番組でした。

 それに、日常生活の話を本題に入る前にするからオープニングが長くて。聞いていると、直ちゃんが恋をしているとか、松本さんが結婚が近いんだなって分かるんですよ。そういうのを全て見せたわけで。カットするようなことも全部見せる。そういうところが新しかったんでしょうね。

 一方、当時はコラムニストのナンシー関さんに週刊文春のコラムで「軽薄」とか「ぬるい」とか毎週のようにボロクソ書かれていたんですよ。でも、実はかなり労力のかかっている番組でした。当時は、良い意味でコントでも何でも、しっかり作り込む時代だったんです。「DAISUKI!」はその真反対。行き当たりばったりの勝負でした。例えば、商店街を歩いている時とかも、面白い人を仕込むと面白くないんです。何でもない街の人の方が、面白くなる可能性あるんですよ。

 そして、そうやっていると普通ではあり得ない出会いとか、面白い場面に遭遇できたりするんですよね。だから、ロケも長くて。最高で11時間とかやったことありましたもん。面白かったというのもありましたけど、歩いていたらもっと面白い内容にできるんじゃないかと思ってやってましたから。放送できないような危ないシーンもありました。商店街を歩いていて店に入ったら親子げんかをしていて包丁持って振り回してるんです。そのままドア閉めて帰ってきましたけど(笑い)。

 ボロクソに書かれましたけど、勝ったと思いましたね。適当にやって視聴率とっているって思ったのでしょうが、妥協のない番組でしたから。今だったら、そんな時間をかけるなんて考えられません。今は街歩きみたいな企画が多いけど、「ただ歩いてください」っていう番組はないと思います。それはテレビの現場が、すごいタイトになっているから。でも僕は、今でも可能性にかけちゃうんで。フジテレビ系「ウチくる!?」なんて、いまだに5時間くらいカメラ回していますから。そういう頑張りを画面から感じさせないで、「ぬるいテレビをつくった男」なんて呼ばれたことを今では勲章だと思ってますよ(笑い)。

 ◆中山秀征(なかやま・ひでゆき)1967年(昭42)7月31日、群馬県藤岡市生まれ。ABブラザーズを結成し、85年フジテレビ系「いただきます」に出演。テレビ、ラジオのバラエティー番組の司会などで活躍中。現在のレギュラー番組は日本テレビ系「シューイチ」(日曜午前7時30分)、フジテレビ系「ウチくる!?」(日曜正午)など。98年に元宝塚女優の白城あやかと結婚。4人の息子がいる。今年8月にアルバム「50」をリリースし、今月9日にはライブ「中山秀征 50th Anniversary Live」を開催。173センチ。血液型B。

 ◆DAISUKI! 日本テレビ系で91~00年まで放送された土曜深夜のバラエティー番組。中山秀征、松本明子、飯島直子がゲストを迎え、街歩きやパチンコ、買い物などをする様子を毎回、放送した。当時、深夜ながら毎回10%以上の視聴率を誇る人気番組だった。