【ベネチア(イタリア)9日(日本時間10日未明)=杉山理紗】ベネチア映画祭の授賞式が行われ、北野武監督(70)の新作「アウトレイジ 最終章」(来月7日公開)がクロージング作品として上映された。北野監督は総立ちの拍手を浴び、笑顔で歓声に応えた。最高賞の金獅子賞はメキシコ出身のギレルモ・デル・トロ監督の「シェイプ・オブ・ウオーター」に決まった。

 エンドロールが流れ始めると、総立ちの拍手が起こった。北野監督は立ち上がって喝采に応えた。「テンサイ!」「ダイスキ!」「アリガトウ!」などの歓声に照れたような笑顔を見せた。ちょうど20年前、金獅子賞を「HANA-BI」で受賞してからベネチア映画祭参加は9回目。何度も見てきたはずの光景を、かみしめるように目に焼き付けていた。去り際に手を振ると、ひときわ大きな拍手を浴びた。

 上映後、華やかな授賞式後のクロージング上映に「お客がいないんじゃないかと思ったけど、切符もみんな売れたっていうし、よかった」と笑わせた。極悪非道の権力闘争を、過激な暴力描写を交えて描いた作品で「クロージングに向いているか」と不安もあったが「ベネチアはバイオレンスに対して寛容だな」。

 カンヌ映画祭のコンペ出品経験もあるが「(最高賞の)パルムドールを取ったなと感じたのに、外されたことがあった。恨みが残っている」と毒づく一方、「ベネチアには期待はずれになるようなことはしたくないんだよ」。

 国内で映画監督として評論家たちに厳しい批評をされ、商業的成功にも恵まれなかった時、ベネチアは金獅子賞という最高の後押しをしてくれた。この日も上映会場前のレッドカーペットセレモニーで大歓声を浴び、サインや握手攻めに笑顔で応じた。「どの映画祭も緊張するけど、ベネチアは安心する。顔見知りのファンもいる。ありがたいけど、それがプレッシャーになってもいる」。来るたびに刺激を受け、新たな製作意欲をかき立てられる。「またベネチアに来る時は、(バイオレンス映画ではない)全然違う作品で来たい」。