ロックシンガー・ソングライター仲井戸“CHABO”麗市が9日、CHABO BANDOで67歳のバースデーライブを開催した。東京・日比谷野外音楽堂に超満員約3000人を集めて、計26曲を披露した。

 アンコール5曲目で「イェー!って言ぇー! OK! チャボ!」との掛け声が響いた。2009年(平21)に亡くなったロック歌手忌野清志郎さん(享年58)の声だ。それは、仲井戸と清志郎さんの1980年(昭55)の共作「雨あがりの夜空に」の合図だ。待ってましたとばかりに大歓声を上げるファンを見やると、仲井戸はギターのストラトキャスターでイントロを奏でた。仲井戸がアナログ7インチレコード盤で37年ぶりにセルフカバーした同曲(18日発売)を、都会の夜空に響き渡らせた。2人が率いた昭和の伝説のロックバンドRCサクセションが、80年代に毎夏恒例のライブを行っていた、思い出の日比谷野音に「雨あがりの夜空に」が帰ってきた。

 「全国をツアーで回ってるとさ、放送局とか新聞社の、まさに社会の中枢にいる40、50代で『昔、RCのファンでした』っていうやつらに、よく会うんだ。とても不思議な気持ちになるよ。俺たちにはロックンロールがあったから、みんなここにいるんだよな」と客席に語りかけた。

 「俺のクロスロードには、ビートルズがいたんだ。清志郎がいたんだ。おおくぼひさこ(写真家の妻)がいたんだ。自分が67歳になるなんて、まるでおとぎ話だよ」。アンコール1曲目では、ザ・ビートルズの「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」を、清志郎さんへの哀悼歌にした楽曲で「俺はここにいて、今夜もこうして歌ってるのさ、相変わらずさ」と歌った。盟友を失って8年。対照的に、まだ現役バリバリの仲井戸は、この時すでに公演時間が3時間を超えていた。

 年齢層の高い観客たちも、大興奮で総立ち状態。そんな頼もしい“戦友たち”を目の当たりにして、仲井戸も「60を過ぎたって悲しくなんてないぜ。いいこともたくさんあるぜ。みんな大丈夫だ、67なんて、まだ小僧だ」と笑い飛ばした。

 いつも派手なことを口にしない控えめな仲井戸だが、清志郎さんの分まで自分が歌い継ぐことを、ひそかに心に決めている。「ある敬愛する先人の言葉をお借りして、自分風に言い換えれば、深い喜びや悲しみの軌跡が音や言葉に表れる。そんな音楽を組織するのが、僕の『音楽』でありたいと思っている」。

 また1つ年輪を刻んだ日本ロックの先駆者の1人仲井戸は、今後も普遍的な音楽の魅力を伝え続けていく。