若年性アルツハイマーを患った妻と介護する夫を描いた映画「八重子のハミング」(佐々部清監督)が、上映開始時の8館から、累計103館での公開になることが21日、分かった。

 同作は、升毅(61)が映画初主演し、高橋洋子(64)と夫婦を演じた。昨秋に山口県で先行公開され、今年5月に全国公開された。全国公開初日時点の上映館数は8館だった。公開後も毎週のように佐々部監督や、升はじめ出演者が全国を回って舞台あいさつを行った。口コミでも評判が広まり、ついに大台超えとなった。

 脚本、監督だけでなく、企画、プロデューサーも務めた佐々部監督は「5万人が最終目標でした。そこまでいくには劇場数も最低30館くらいは必要だと考えていました。半年間で100館を達成。動員数も7万人に迫る勢いです。まだまだ終わらせません」と大喜びだ。

 先行公開から1年がたったが、上映は途切れていない。今月中旬には上映50週の達成記念に、佐々部監督、スタッフ、キャストが集まり、お祝いの会を催したという。

 佐々部監督が企画を立ち上げた当初、「シネコン時代に中高年夫婦の話は地味すぎる」と言われた。若い世代やファミリー層が主なターゲットのシネコンでは4~5週で作品が入れ替わる。逆に動員が見込めないと判断されれば早々に打ち切られてしまう。「八重子-」は、地方の中小劇場を中心に展開し、ロングランを達成した。作品の評判を知って、シネコンからの引き合いもあったという。

 配給関係者は「老老介護という現代社会が直面するテーマ性に加え、重責を果たそうとする升さんの熱意、監督の命がけの本気度が伝わった」と話している。