北野武監督(ビートたけし=70)が「アウトレイジ 最終章」で、98年「HANA-BI」以来2度目の石原裕次郎賞に輝いた。初めてのシリーズ映画の完結編。映画に情熱を傾けた裕次郎さんに思いをはせた。

 北野監督は、裕次郎さん没後30年という節目の年の受賞を喜んだ。「裕次郎さんに会ったことがないんだけど、大スターの名前が付いた賞は非常に光栄です。こういう賞は本当にうれしい。前回、奥さんのまき子さんに表彰されて感激したんだ」。

 裕次郎さんが、俳優、プロデューサーとして映画に傾けた情熱に敬意を表した。50年代から60年代に大手映画会社が、専属俳優、監督の引き抜きなどを禁止する5社協定(後に6社協定に)があったが、裕次郎さんは63年に、石原プロモーションを設立、独自の映画製作に乗り出した。「映画会社が圧倒的に強い時代によくぞ反旗を翻したというところがあるよね。それでも裕次郎さんが、結果的に歴史に残るスターでいられたのは、もともとの強さがあったと思う。やっぱりすごい人。切り替えも早くて重い映画も作ったしね」。

 「アウトレイジ 最終章」は、監督生活で初めてのシリーズもの。興行成績は右肩上がりで、3作目となる今回の完結編は15億円を突破した。12年の前作製作時、3作完結を決めた。「深作(欣二)さんの『仁義なき戦い』みたいに、死んだ人が名前が変わって次から次へと出てきちゃう。でもあれは相当腕がないとできない。だから1回休もうかなと」。

 シリーズを通して演じた大友ともお別れだ。「組にとって都合がいいと思っていた大友が、とんでもねえ昔かたぎで、義理とか人情と言い出して手に負えなくなった。映画の役として魅力がある」と、自分にも重ねるように語った。

 これから恋愛小説「アナログ」を映画化した後、再びヤクザ映画を作ると明言した。【小林千穂】

 ◆北野武(きたの・たけし)1947年(昭22)1月18日、東京都生まれ。89年「その男、凶暴につき」で監督デビュー、日刊スポーツ映画大賞新人賞。97年「HANA-BI」でベネチア映画祭金獅子賞、03年「座頭市」で同監督賞。「アウトレイジ 最終章」は同クロージング作。映画出演は「戦場のメリークリスマス」「御法度」など。04年「血と骨」では日刊スポーツ映画大賞主演男優賞。

 ◆アウトレイジ 最終章 シリーズ完結編。山王会と花菱会、東西暴力団の抗争後、元大友組組長の大友(ビートたけし)は日韓を牛耳るフィクサー張会長のもとにいた。花菱会幹部の花田(ピエール瀧)が韓国で騒動を起こし、張会長の手下を殺す。大友はある決意を胸に日本に帰国する。

 ◆石原裕次郎賞 戦後を代表する映画スター石原裕次郎さんの遺志を引き継ぎ、石原プロモーションの全面協力で日刊スポーツ映画大賞に併設。興行的にヒットした作品や完成度が高く大作感のある娯楽作に贈られる。賞金300万円。

 ◆石原裕次郎賞・選考経過 「何を選ぶのか悩ましい」(宮崎晃氏)の声もあったが、「キャラクターが次々と出てきて、死んでいって、最後はきれいに収めた。北野監督の実力に脱帽」(木下博通氏)などの声を受け「アウトレイジ 最終章」に決まった。