芥川賞作家本谷有希子氏の小説「生きてるだけで、愛。」が、主演趣里(27)で映画化されることが4日、分かった。共演は菅田将暉(24)仲里依紗(28)。撮影は先月末に終了しており、今年秋公開される。

 そううつ病に悩む主人公寧子(趣里)が、ひょんなことから恋人となり同居している津奈木(菅田)や周囲の人たちに刺激を受けて成長していく姿を描き、生きていることの尊さや生きづらく思っている人たちを優しく肯定する作品。原作は芥川賞、三島賞候補作に選ばれている。寧子にしつこく付きまとう津奈木の元恋人を仲が演じる。

 趣里は、異様に気分が高揚する状態と、気分が落胆する状態を繰り返す役どころに挑んだ。撮影中の趣里に聞くと「昔あったことを呼び起こす感じで演じています」と話した。趣里自身、かつて、バレリーナを目指して海外留学をしたことがあったという。しかし、けがにより夢を絶たれた。ボロボロだった当時を振り返り「死んだようなものだった」という。帰国後は心機一転、バレエと同じく“表現”の仕事である女優を目指した。

 そんな趣里に関根光才監督はほれ込んだ。オーディションの一環として行った面接で、趣里は挫折の過去をさらけ出した。寧子と重なる姿に関根監督は「寧子として好きにやってね」と全幅の信頼を置いた。

 趣里は、原作に「すごく救われた」という。そして「つらいときは、誰かがいることや息をしていることさえも忘れちゃうけれど、その先には絶対に希望がある。そのために生きているんだな、と感じられる作品になっているはず。自分が苦しいときは映画や舞台に救い上げてもらったので、私もこの作品で誰かを救えたら」と話している。【杉山理紗】