スキマスイッチが3年3カ月ぶりとなる新オリジナルアルバム「新空間アルゴリズム」を発売した。ボーカル大橋卓弥(39)とピアノ常田真太郎(40)によるデュオも7月でデビュー15周年を迎える。ここまでの道のりで、互いに距離を置いた時期もあったが、それを乗り越えて前に進み続けている。

 今月14日に発表した新アルバム「新空間アルゴリズム」は、原点回帰をテーマにした。最近3年間は、カバー曲を歌うライブや、他のアーティストをプロデューサーに迎えたリアレンジ(再編曲)アルバムの発売など、おもに外部から刺激を受けてきた。

 大橋 今回の作品は、この3年でインプットしてきたことが、制作意欲に変わっていって作ったアルバムです。デビュー当時のように、テクニックも経験もないけど、がむしゃらに「こういう曲があったらいいな」って突き進んでいく感じで1曲ずつ作っていって、まとめた感覚です。

 常田 タイトルも「漢字+カタカナ」でスキマらしい。昔聞いてたなとか、また聞いてみようというきっかけになれって思います。

 原点回帰を象徴する収録曲「未来花(ミライカ)」はスキマスイッチらしい、常田のピアノと大橋の歌だけのバラード曲。「名前を呼ぶ」という普遍の愛をテーマにした。

 大橋 2015年にデモ(制作段階の曲)ができた時から手応えがあって、最初に発表する時は、ピアノ1本の曲にしようと決めていました。

 常田 名前を付けてもらったり付けたことには、必ずエピソードや気持ちがあるし、それを曲にできないかなと考えていて、自分たちがそこに追いついてきたと思います。2人で自分を見つめ直しながらレコーディングもできました。

 15年を振り返ると、転機は5周年を迎えた08年だった。美しいハーモニーとメロディーが支持され、03年のデビュー直後から「奏(かなで)」「全力少年」などヒットを連発し、NHK紅白歌合戦にも3年連続出場。初のアリーナツアーも成功させるなど勢いが加速するばかりの中、2人は突然、ソロ活動を始め、互いに距離を取り始めた。多忙さが原因の1つだった。

 常田 会って意思疎通を図る時間が作れなかったり、1曲1曲に対して気持ちを込められるスケジュールではなかった。お互い別のことをやらないと、間に合わなかったんです。

 大橋 タイミング的にはベストではなかったと思います。でも僕らにとってはそこしかなかった。

 今思えば、あまり積極的な理由によるソロ活動ではなかったが、自分とじっくり向き合う時間は得た。そこから見えてくるものがあった。

 常田 再び2人で始める時にいろいろな話をして、顔を突き合わせて、言いたいことは全部言って組み合わせていくスタイルができた。それが今につながっています。

 ともに今年40歳になる。不惑を迎え、決意も新たにしている。

 常田 「もう大丈夫、何でもいける!」というよりは「何が起こっても大丈夫」という感じでしょうか。その上で、がむしゃらにやるプロセスが楽しめるんだろうなと思います。

 大橋 人生の折り返し地点なのかなと思うと、やりたいことが全部できるのかという感覚にもなって、今のうちに…という思いも強くなってきています。これまで、その時の自分たちの等身大を意識してやってきて、そのスタイルは変わらない。いい意味での裏切りも、ずっと発信していけたらと思っています。

 2人は大きな夢を持っている。「いつか自分たちが主催のスキマスイッチフェスをやってみたい」。15周年は通過点。視線は常に先に向けられている。【大友陽平】