30年ほど前に、君は「チャリティーコンサートをするんだけど、その時の曲を作って欲しい」と突然言い出した。「秀樹、僕は人の曲を作らないって知ってるだろ?」「うん、だから作って」「秀樹、だから作っては、日本語、変だから」「うん、最後にみんなで歌う曲、作って欲しいんだよ」「秀樹、悪いんだけど無理だから。それ、出来ないから」「分かってる。一応締め切りは●日だから」「秀樹、それ出来ないからね」って別れたのに、締め切り日ギリギリにパジャマ着て、譜面とデモ音源を君の家に届けた僕に、まるで僕が作ってくるのが当たり前のように玄関先で「ありがとね」って君は笑顔で一言…完全に見透かされてるよね。

 今年になってから、その曲がシングルカットされているのを知って。僕はそれまで知らなかったんだよ、シングルカットされているのは。君のマネジャーにお願いして、音源をもらって、CDから君の声だけ取り出して2月の僕のコンサートでデュエットした。なぜ今年だったんだろう。不思議でならない。コンサートを見に来てくださった君のファンも喜んでいたと、奥さんから聞きました。

 デビューしてアイドルと呼ばれるようになった僕らは、その席を後輩に譲らなければ、その先の高みを目指さなければ、と考えていた。その方向が、僕らは一緒だった。同じ方向を目指していた。秀樹は決して、アクション歌手じゃないし、本物のラブソングを届ける歌手を目指していたことを、僕は知っている。1993年、初めての「ふたりのビッグショー」で共演。一緒に歌った。ハーモニーの高いパートは僕で、最後に格好良く決めるのは秀樹。でも僕は、そんな秀樹が大好きだった。本当に格好いいと思っていた。