【ニューヨーク28日(日本時間29日)=大友陽平】シンガー・ソングライター平井堅(46)が、市内のソニーホールで、コンセプトライブ「Ken’s Bar」の20周年特別公演を行った。かつて日本で思い悩んだことから、3カ月ほど暮らしたこともあるゆかりの地で、2010年以来8年ぶりにライブを開催。立ち見を含む500人を、美声で酔わせた。

「Ken’s Barへようこそ!」。デビュー当初の98年から始まった、ファンが酒を飲みながら楽しめるコンセプトライブを“開店”させると、日本から駆けつけたファンや、現地在住のファンから大歓声が上がった。

米歌手フランク・シナトラ「ニューヨーク・ニューヨーク」やマリリン・モンロー「I Wanna Be Loved by You」のカバーのほか、代表曲「瞳をとじて」など18曲を披露。リクエストで歌った「POP STAR」では総立ちのファンに交じって、現地の店員も手拍子でノリノリになる盛り上がりも見せた。

ニューヨークはデビュー前、初海外として訪れた憧れの地だった。00年に「楽園」がヒットしてブレークも、スター街道を駆け上がっていた03年夏ごろには、スランプを経験。「ちゃんと歌わなきゃいけない。歌詞を間違えちゃいけない」と、自分にとって最大の喜びだった歌うことが恐怖に変わり、一時は引退も覚悟した。日本を離れ、市内の中心部・マンハッタンで3カ月ほど暮らした。「ニューヨークは自由度も高いし、人と違っていても許容してくれるところ。自分は自分でいい」。当地が恐怖心を癒やし、自分を見つめ直すことができた。

デビュー15周年記念ライブ(10年)をニューヨークで行うなど、節目には必ず訪れた。今回も同地を選んだ。「自分にとってもニューヨークでライブが出来るのはご褒美」と言い切り「前まではフワフワした感覚だったけど、今は地に足を着けて歌えているし、今回も会場の雰囲気やムードも感じられました」と楽しめるようになった。

公演の最後には「ありがとうございました!」と地声でファンに感謝。公演中、自身は飲酒しておらず「I need beer right now!(私は今ビールが飲みたい!)」とちゃめっ気も見せて、記念公演を締めくくった。

◆Ken’s Bar 98年5月29日、東京・大久保のライブハウス「ON AIR Okubo Plus」で始まったコンセプトライブ。オリジナル曲に加え、洋楽、邦楽のカバー曲を、アコースティック形式で披露し、観客は酒を飲みながら楽しめる。例年七夕とクリスマスに行うのが恒例。今年11~12月には全国5都市でアリーナツアーも開催。03、09、14年には同名のカバーアルバムも発売。