NHK大河ドラマ「西郷どん」の平均視聴率は、関東地区で最近、11%前後と低迷しています。内容は素晴らしく、旬の実力派俳優が顔をそろえ、熱演しています。NHKも出演者もいい作品を作ろうと頑張っている様子がこれまでの会見からもうかがわれます。ではなぜ、視聴率が伸びないのでしょうか。

一般的には幕末をテーマにした作品は、数字がさほどよくない傾向にあると言われます。幕末の複雑で混沌(こんとん)とした状況を丁寧に描いても、視聴者には、どうしても分かりづらいという意識が芽生えがちのようです。

もう1つは、個人的に感じることですが、全体的なトーンが暗いこと。電灯のない時代ですから仕方のないことですが、室内のシーンが多く、映像が暗いのです。NHKから番組の新聞掲載用に配布される劇中のシーン写真も暗くて、紙面になると顔がよく分からないほどです。明日から仕事だという視聴者には気が重くなる影響を与えてしまっているのではないでしょうか。

暗いのは照明だけでなく、作品に漂う空気感も。序盤は、若くて元気ではつらつとしていた主人公の吉之助も、幕末に向かって次第に笑顔が少なくなり、作品全体が重苦しい印象を持つようになった気がします。もちろん26日の放送で描いた薩長同盟のように感動的な内容も多いし、出来は素晴らしい作品だと思います。ただ、翌日から仕事が始まる視聴者を取り込むには、気分がスカッとするとか、元気とパワーを与えてくれる明るさが、ちょっと足りないのかもしれません。