歌手として長いキャリアと実績を誇る北島。1人1人のファンを大切にすることでも知られる。「命が尽きるまで、お客さまのために歌い続ける」が口癖で、「お客さまのために-」と話すのを何度も耳にした。

17年末で競走馬を引退したキタサンブラックの馬主としても知られたが、勝利の後で競馬場で「まつり」を歌唱する姿は風物詩だった。優勝馬セレモニーの進行などから考慮すると、歌唱はない方がいい。だが、競馬場に集まったファンの熱い期待感と「サブちゃん」コールを受けると、いつも「まつり」を熱唱、大きな歓声を浴びた。進行を懸念する周囲の“雑音”などは、さっと吹き飛ばす熱いサービス精神だった。

ファンと同様、あるいはそれ以上に妻の雅子さんも大切にしている。特別な用事がない限り、夕飯はいつも夫婦一緒に食卓を囲む。雅子さんは「新鮮な野菜を食べさせたい」と、約10年前に家庭菜園を始めた。実は北島は野菜が大の苦手。そのために料理に工夫をこらし、愛情を隠し味として添え、16年に頸椎(けいつい)症性脊髄症の手術を受けた夫の体調管理に常に気を配っている。

80歳の傘寿を迎えている北島夫妻。自分も将来はこんな夫婦になれたらいいな…。そう思わせてくれるベストカップルです。【松本久】