宝塚歌劇の雪組公演「壬生義士伝」「Music Revolution!」が5月31日、兵庫・宝塚大劇場で開幕し、トップ望海風斗(のぞみ・ふうと)は愛と義を貫いた新選組隊士・吉村貫一郎を熱演した。

「令和」に開幕する本拠地作の第1作。初日のこの日、原作の浅田次郎氏も客席から観劇した。

浅田氏の原作をもとにドラマ化、映画化もされた今作。それぞれ主人公は渡辺謙、中井貴一が演じた。南部藩の足軽だった吉村は、貧しさゆえ苦労する妻子のため、脱藩を決意。身分にとらわれない新選組への入隊を決意し、危険な任務もいとわず、ひたすら故郷の妻子へ仕送りを続ける。

望海は「演じる方によって印象が違った。ならば宝塚という枠にも選択肢があるんじゃないか」と考え、独自の吉村貫一郎像を作り上げてきた。

全身全霊を妻子への「愛」と、南部藩のサムライとしての「義」にささげる姿に「トップとしても、こうあればすばらしい」と言い、自身の立場をも投影。表面上は優しい笑みを浮かべながらも、冷徹でもある比類なき剣の腕を持ち、筋の通った心根を秘めた主人公を的確に体現した。

望海演じる主人公の愛を一身に受け止める妻を演じたトップ娘役の真彩希帆(まあや・きほ)は、京で吉村が出会う両替商の娘との2役に挑戦。2番手スター彩風咲奈(あやかぜ・さきな)は吉村の幼なじみで、足軽から南部藩差配役へ出世する大野次郎右衛門を温かく演じ、彩凪翔(あやなぎ・しょう)は新選組副長の土方歳三を情感豊かに表現した。

吉村を敵視しつつも、その生きざまに感銘を受ける新選組きっての剣の使い手、3番隊組長の斎藤一は朝美絢(あさみ・じゅん)が好演し、沖田総司は永久輝(とわき)せあが軽やかに演じた。

ショーは一転して、望海、真彩の“歌ウマ”トップコンビによる王道路線。望海は「壬生義士伝で、みなさまがすごく、心を締め付けられたなら、ショーで心を解放して帰ってもらえれば」と言い、男役を従えて踊る大階段での黒えんびも披露。真彩とのデュエットに加え、今作に専科から出演している同期の凪七瑠海(なぎな・るうみ)とのコンビでも魅了した。

宝塚大劇場は7月8日まで、東京宝塚劇場は7月26日~9月1日。