尾上菊之助(42)が9月30日、都内で、主演する新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」(12月6~25日、東京・新橋演舞場)の制作会見を行った。中村七之助(36)、スタジオジブリの代表取締役プロデューサー鈴木敏夫氏(71)、演出を務めるG2氏も出席した。

82~94年に連載された漫画「風の谷のナウシカ」の全7巻すべてを昼夜通しで上演する。84年に公開された宮崎監督による同名アニメ映画で描かれなかった部分も忠実に歌舞伎化する。

「火の七日間」と呼ばれる戦争で文明が滅び、有毒な菌類の森、腐海に覆われた世界が舞台。2つの強国の争いに巻き込まれていく辺境の小国「風の谷」の族長の娘ナウシカが主人公。

歌舞伎化を熱望し、5年前から準備を始めたというナウシカ役の菊之助は「今日が門出となりましたこと、今すごく武者震いしております。歌舞伎ファン、ジブリファンに絶対に納得していただけるようにしたい。ジブリさんに大事な作品をお預けいただいた責任感を感じています。ラグビーの(精神)『One for all All for one』のように、ひと場面ひと場面、一座一同、力を合わせて作りたい」と話した。

強国トルメキアのクシャナを演じる七之助は「菊之助のおにいさんから電話でお話をいただいた。断る理由がない。純粋にうれしかったです。全員ですばらしい作品にしないと、スタジオジブリのためにも歌舞伎のためにもならないので、全力でやりたい」と力を込めた。

鈴木氏は「原作が歌舞伎でどういうことになるのか期待する立場なので、映画と違って気楽です」と笑い、宮崎監督にとって「-ナウシカ」が一番大事な作品だとした。これまでハリウッドの実写化オファーなども断ってきたという。宮崎監督は歌舞伎化にあたって、ナウシカのタイトルは変えない、記者会見などは鈴木氏に任せる-という条件を出したという。

歌舞伎の古典手法を使った演出になる。菊之助は「飛び六方、宙乗り、本水、あらゆる歌舞伎の手法を駆使したい」とした。

新作歌舞伎の昼夜通し公演は、松竹によると江戸時代以来ではないかという。壮大なテーマと全7巻の歌舞伎化ということで、上演時間は未定。菊之助は「歌舞伎の常識的な時間に終わりたい」としつつ、七之助は「時間は気にしないで来てください。お客さまも頑張って」と笑わせた。