105周年の宝塚歌劇団で「新世紀の顔」の1人、花組トップ明日海(あすみ)りおが9月30日、兵庫・宝塚大劇場で、退団公演「A Fairy Tale-青い薔薇の精-」「シャルム!」の千秋楽を迎えた。仲間に、大劇場に、ファンに感謝、感謝のサヨナラ。雨予報も「晴れ男役のプライドにかけて」祈り、雨を回避。パレードに集まった8000人に見送られ、本拠地に別れを告げた。東京宝塚劇場公演千秋楽の11月24日付で退団する。

   ◇   ◇   ◇

男役を愛した17年。本拠地ラストは、男役の正装・黒えんびであいさつした。中学時代に宝塚受験を志し、反対する両親を説得。明日海は「タカラジェンヌになれただけでも、スーパー・ハイパー・ギガ・メ…メガ幸せです」と、満面笑みで本拠地とお別れした。

初観劇が大劇場。明日海は上下左右に目をやり「宝塚大劇場さんっ! ここで感じたこと、過ごした時間、一生忘れません。さようなら」と、劇場にまで“あいさつ”。貴公子然とした美貌と抜群の歌唱力、繊細な芝居の平成を代表するトップから、素顔の“天然系トーク”も飛び出した。

劇場との“会話”は、明日海にとって日常だった。03年入団。月組に配属され、若手時代から抜てき続き。12年に月組準トップに就き、本拠地作で主演役代わり。明日海は「舞台の上が怖い時も、愛にあふれた時も、本当にいろいろで…」と振り返る。トップ就任後も「『みんな今日も無事でよかった』って(劇場)と会話してきました。今日でここを去るのかと思うと…」と言い、思わず出た本心だったと明かした。

この日は朝の楽屋入りで、下級生、ファンらの出迎えに「グッときた」が、舞台での涙は「大丈夫でした」。不安だった天気は「晴れ男役のプライドにかけて」祈願し、連日、予報をチェックしていた。

サヨナラショーは、本拠地お披露目「エリザベート」など、花組トップ時代の楽曲を歌い、人気漫画を原作にした「ポーの一族」では、次期トップの柚香光(ゆずか・れい)とデュエット。恒例の同期からの花束は、雪組トップ望海風斗(のぞみ・ふうと)から受け、舞台上で「生まれ変わってもまた、一緒にやろうね」と話したといい、最後は、花束を左肩に抱えての「花組ポーズ」で締めた。

パレードは、劇場周辺工事の影響で、少ないスペースながら8000人が集まった。「明日海さん、最高」のかけ声に、ガッツポーズを繰り返した。【村上久美子】

◆明日海(あすみ)りお 6月26日、静岡市生まれ。03年入団。月組配属。貴公子然とした姿、歌唱力で若手時代から注目。12年に月組準トップ。本拠地2作で主演役がわりをし、花組へ移り14年5月に花組トップ。任期約5年半は平成入団で歴代3番目。本拠地主演経験12作は、平成以降退団のトップ最多。15年に台湾公演主演。相手娘役は蘭乃はな、花乃まりあ、仙名彩世、6月に劇団初の横浜アリーナ公演で華優希と、4人を迎え平成以降トップ最多。身長169センチ。愛称「みりお」「さゆみし」。