NHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺」の初回から最終回までの期間平均視聴率が関東地区で8・2%(ビデオリサーチ調べ)と、大河ドラマ史上最低を記録した。しかも、単なる最低記録更新ではなく、初めて1桁という事態。原因は4点あると考えられる。

まずは、大河ファンにはあまり人気がないとされる近現代をテーマに描いたこと。

2番目は、作品の序盤、特に初回が、年齢層の比較的高い大河の視聴者には分かりづらいという印象もあった。時代が行ったり来たりしたほか、主人公の金栗四三とともに登場した古今亭志ん生の存在が、主人公とどう絡んでくるのか、まるで2つの世界が1つの作品に存在しているようだった。長年、大河を見続けてきた年配の視聴者には、凝った作りは逆効果という指摘も出た。

3番目は強い裏番組の登場。これまでライバル視されたのは日本テレビ系「世界の果てまでイッテQ!」だったが、平均視聴率20%近い数字をキープするテレビ朝日系「ポツンと一軒家」が登場し、大河ドラマと同じ中高年の視聴者を連れ去ってしまった。

4番目は出演者の不祥事。3月にはピエール瀧が麻薬取締法違反容疑で逮捕され、10月にはチュートリアル徳井義実が東京国税局から1億3800万円の申告漏れなどを指摘され、当面の芸能活動自粛を発表した。大きなイメージダウンにつながった側面もある。

視聴率がすべてではないが、東京五輪の前年ということで、企画先行で進行したことも考えられる。時代劇好きな大河ファンにはなじめなかった人もいたのかもしれない。

一方で、最終回には脚本を担当した宮藤官九郎氏がタクシー運転手役で出演するなど、遊び心が満載の作品でもあった。主演の阿部サダヲが笑いの要素を作品に吹き込むなど、新しい大河に挑戦した印象もあった。結果的に数字は低迷したが、根強い「いだてんファン」も生んでおり、「確かに視聴率は悪かったが、これまでの大河で見たことのない斬新な構成がかなり面白かった」という声も多く聞かれた。

来年の大河「麒麟がくる」は長谷川博己が主演し、明智光秀が主人公。大河得意の戦国時代もので、時代劇ファンが戻ってくることが期待される。出演予定だった沢尻エリカ被告の薬物事件による逮捕、起訴による影響でスタートが2週間遅れるなど、早くも困難に直面している。

東京五輪の年、大河に明るい復活の光が見えるか。注目される。