映画「渡り鳥」「拳銃無頼帖」「流れ者」シリーズなど、数々の日活アクション映画で活躍した俳優宍戸錠(ししど・じょう)さんが、東京都世田谷区の自宅で亡くなったことが21日、分かった。86歳。「エースのジョー」の愛称で親しまれ、バラエティー番組や料理番組でも活躍した。葬儀・告別式の日取り、喪主は未定。長男は俳優宍戸開(53)。

関係者によると、宍戸さんは20日深夜、自宅で倒れているのが発見された。21日午前1時24分に119番通報があり、救急隊が駆け付けたという。警視庁によると事件性はないとみられる。宍戸さんは、06年に虚血性心不全と診断されて入院し、手術を受けたことがある。

宍戸さんは13年、世田谷区にあった築50年の自宅が火事で全焼する被害に遭った。その3年前には日活の元女優で妻游子さんと死別している。

型破りな俳優だった。日活に入社した時は端正な顔立ちで、二枚目路線だったが、「渡り鳥」シリーズで、主演小林旭の敵役がはまり、徐々に悪役路線へ転向した。もともと悪役にはこだわりがあったため、入社から3年後、美容整形手術でほおをふくらませ、アクの強い顔になった。

当時は美容整形への抵抗感は強く、批判もあったが、ふくらんだほおは、口ひげとともに宍戸さんのトレードマークになり、「エースのジョー」と呼ばれて人気になった。

宍戸さんは、石原裕次郎さん、赤木圭一郎さん、和田浩治さん、小林旭ら、日活の主力スター路線「ダイヤモンドライン」に加入し、日活黄金期を支えた。西部劇好きで、ガンマンのスタイルを研究、殺し屋スタイルを確立した。文字通り、自分の手でたぐり寄せたスターの座だった。出演作品は300本を超える。

01年に、ほおに注入していた物質を除去する手術を受け、テレビ番組で公開したことも異例だった。

子だくさん家族に生まれ、両親から「子作りに錠をかける」という意味で「錠」と名付けられた。だが、弟の郷■治も生まれ、俳優になった。妻の游子さんとの間には、長女でエッセイストの紫しえ、長男で俳優の開、次男をもうけた。

結婚当初は「子供が生まれて大きくなった時、共演できるような息の長い役者でいたい」と夢を掲げ、91年にはNHK連続テレビ小説「君の名は」で父子共演を果たした。

映画業界の低迷期には、テレビでも活躍した。日本テレビ系「なんでもやりまショー」「巨泉・前武ゲバゲバ90分!」などバラエティー番組に出演。フジテレビ系「食いしん坊!万才」では4代目リポーターを務めた。

悪役として主役を絶妙に引き立て、数々のハードボイルド作品に欠かせなかった。豪快でスターそのものだったが、俳優は人を楽しませるのが仕事と、おちゃめな姿を見せるのも喜んだ。昭和のスターがまた1人、旅立った。

◆宍戸錠(ししど・じょう)1933年(昭8)12月6日、大阪府生まれ。54年、日活が募集した第1期ニューフェースに合格し日大芸術学部を中退。55年「警察日記」でデビュー。「渡り鳥」「拳銃無頼帖」「流れ者」シリーズなどで人気に。愛称は「エースのジョー」。61年「ろくでなし稼業」で映画初主演。映画はほかに「野獣の青春」「殺しの烙印」など。ドラマはNHK大河ドラマ「武田信玄」「葵 徳川三代」など。バラエティー番組「巨泉・前武ゲバゲバ90分!」「元祖どっきりカメラ」などでも活躍。

※■=金ヘンに英