今年8月10日に亡くなった俳優渡哲也さん(享年78)の追悼上映会で行われた映画監督でカメラマン、木村大作氏(81)のトークショーを取材した。

その日上映された「時雨の記」「誘拐」でカメラマンを務めるなど木村氏は渡さんと親交が深かった。トークショーの中で木村氏は、同様に親交のあった高倉健さんと渡さんの名前をたびたび口にしていた。2人の偉大さを語ると同時に、現在の若手俳優についても言及していたのが印象的だった。

渡さんについては「男として見ても美しい表情をできる。男らしい俳優」と評し「セリフがなくてじっとしているだけでも(間が)持つでしょ。じっとしている顔に何かを感じるんだよね。それは高倉健さんと渡哲也さんが最右翼だよね」と明かした。

続けて「セリフをしゃべらないで心情を表せるというのは、いまどきの若い俳優にはなかなかいない。今どきの俳優でそういうものを感じるのは岡田准一、小栗旬。あと浅野忠信なんかは、お芝居していない『しーん』とした顔は、精神的なものを感じるんですよね」と褒めた。

また「日本の女優さんは、どういうカメラマンが自分を撮ってくれるかは監督以上に気にするんです」とも説明。当然、ほとんどの女優が自分を美しく撮ってくれることを望むというが「最近出てきてあまりそういう神経を使わなくていいのは蒼井優。あの人はぼく、大好きです。あとは黒木華、宮崎あおいとか」と挙げた。そして「彼女たちは『自分はどうでもいいです』っていう。『リアリティーを撮っていただければいいんです』って言うんです」と明かした。

数々の名優を撮ってきた巨匠がどのように現在の俳優を見ているのかを聞くことができ、興味深かった。

木村氏自身は先月27日に文化功労者に選出された。次作も期待されるが「時代劇をやろうと思っている」と意欲をみせており、楽しみだ。【佐藤成】