NHK大河ドラマ「麒麟がくる」が、明日7日に最終回を迎える。本能寺の変がどう描かれるのか、番組ファンの期待も高まっている。明智光秀が織田信長を討ったこと以外は謎だらけという戦国最大のミステリーは、昔から作家性の発揮のしどころ。これまでもSFからメルヘンまで、何でもありで描かれてきた。個性的すぎて記憶に残る本能寺の変を10本挙げてみた。【梅田恵子】

◆大河ドラマ「江~姫たちの戦国~」(11年、NHK)

メルヘン本能寺。死を覚悟した信長(豊川悦司)の前に、幼い姪っ子、江姫(上野樹里)のまぼろしが現れ、いざなわれるように光の中へ。馬に仲良く2人乗りして駆けていくキラキラなファンタジーに戦国ファンが大いにざわつく。江姫は、信長の死を夢のお告げで知る。

◆「光秀のスマホ」(20年、NHK)

LINEで本能寺。エゴサする光秀、裏アカでグチる光秀、信長の鬼電に震える光秀。手の中のスマホ画面だけで戦国時代を描き、「麒麟がくる」の1年を30分(5分×6話)でやってしまって笑った。家臣団とのグループLINEで「敵は」「本能寺に」「蟻!」。あせって変換ミスする光秀と、炎上する本能寺から「光秀、是非に及ばず」とLINEしてきた信長の達観。民衆の竹やりに射抜かれ、動かなくなったスマホのラストもあざやかだった。

◆大河ドラマ「国盗り物語」(73年、NHK)

司馬遼太郎原作の王道系。パワハラと領地召し上げにキレた光秀(近藤正臣)による“暴君討伐説”というベーシックの傑作として人気が高く、流血する光秀の「殺してやる」の心の声がキレキレ。「敵は本能寺にあり」「敦盛」「是非に及ばず」の流れがわくわくと進み、信長(高橋英樹)が光秀を高く評価していたゆえの悲劇性もずば抜け。領民思いの光秀が、領民の竹槍に沈む泥まみれの末路も切なかった。もっと古い「太閤記」(65年)もNODで見たが、後の戦国ドラマへの影響がよく分かるかっこよさ。

◆「時空警察」(01年、日本テレビ)

都市伝説系。光秀は生きていて、徳川3代の側近として天下太平に大きく関わった謎の僧、天海の正体であるという「光秀=天海説」をうまく料理。比叡山の石灯籠の文字、日光の明智平、「秀忠」「家光」を組み合わせると「光秀」など、トンデモな都市伝説をしっかりエンタメ化していて、ロマンの広がりという意味では個人的に好み。家康や秀吉の“協力”がないとできないウルトラCで、各武将との友情を丁寧に描いてきた「麒麟がくる」なら、こんな展開も意外とはまると思う。

◆「女信長」(13年、フジテレビ)

信長は女性だった、という仮説系。愛する信長(天海祐希)を宿命から救ってやりたい光秀(内野聖陽)が、「信長は死んだ」ことにするため本能寺の変を起こす戦国ラブストーリー。ツッコミどころ満載だが、エンタメとして「そうくるか」の痛快があり、この流れでの「敵は本能寺にあり」がとてつもなく切ない。男装の天海祐希が舞う「敦盛」も宝塚時代のようで心躍った。2人で船で異国へ、というハッピーエンドも振り切っていて良い。

◆「へうげもの」(11年、NHK)

人気マンガをアニメ化。天下をねらう秀吉が、明智をそそのかして信長を討たせたという秀吉黒幕説。明智軍の到着前に本能寺に潜入した秀吉が、寝所から起き上がってきた信長の胴体を水平に真っ二つ。切れた胴体がまだ乗っかっている信長が「刀が安い!」と一喝し、まさに魔王の風格。自らの血で茶をたて、ひきつる秀吉に茶わんを手渡して絶命。アニメだから描ける創作とはいえ、信長のかっこよさではこれがいちばんかも。

◆NHK大河ドラマ「真田丸」(16年)

ナレーションでお知らせするだけの“ナレ死”系。武将の死をナレ死で終わらせるのは「麒麟」を含めて最近の大河ドラマがよく使う手法だが、「真田丸」は本能寺の変というビッグイベントを45秒のナレ死で終わらせるスピード本能寺で話題に。寺とともに焼け落ちるよろいの映像と、「そのころ、天下統一を目前に織田信長が散った」というナレーションのみであっさり次へ。主人公が臨場していないイベントは大胆にスルーする三谷幸喜印がSNSを沸かせた。

◆空想大河ドラマ「小田信夫」(17年、NHK)

超絶コメディー系。ネプチューン主演で大河のパロディー。ホリケンの小田が何かというと「敦盛」を舞いたがり、面倒くさい明智(名倉潤)が主君におきゅうを据えようと謀反。炎の中、ついに「敦盛」を舞う小田の前に明智が登場し、仲直りして一緒に舞う。最終話のタイトルは「本能寺の辺」。実際の大河のセットとスタッフを使った映像の格調と、ばかばかしいストーリーのギャップが新鮮だった。

◆映画「信長協奏曲」(16年)

SF系。現代から戦国にタイムスリップした高校生サブロー(小栗旬)が、同じ顔をした織田信長の影武者に。本物の信長は覆面キャラの光秀となり、最後は2人とも秀吉(山田孝之)のわなにはまる。同じ顔が2人いることを利用した秀吉による二重構造の本能寺の変が大胆に描かれ、光秀ではない人が言う「敵は本能寺にあり」が新鮮。炎の中で、同じ顔の信長と光秀が交わす別れも見応えがあった。信長のスター性はSFと相性がいい。

◆映画「戦国自衛隊」(79年)

SF大作系。陸上自衛隊の1個小隊が戦国時代にタイムスリップ。昭和への帰還を目指し、戦車、ヘリ、装甲車の近代装備で戦国を駆け抜ける。いきなり天下取りの表舞台に現れることになった隊長(千葉真一)に信長が重なり、友の裏切り、荒れ寺が焼け落ちるラストシーンなど、本能寺の変を思わせるモチーフは有名。自衛隊と騎馬軍団の合戦や、飛行中のヘリに真田広之が飛び乗る超絶スタントなど、何から何までスケールが壮大すぎて、見たことがない本能寺の変の金字塔。