昨年3月に62歳で亡くなった映画監督の佐々部清さんの最新作で遺作となった映画「大綱引の恋」が、第16回大阪アジアン映画祭で、5日(シネ・リーブル梅田3)に特別招待作品として上映される。

4日、企画と制作、出演の西田聖志郎(65)が、大阪市北区の日刊スポーツ新聞社を訪れ、本作品の魅力を語った。

映画「陽はまた昇る」「半落ち」などでメガホンを取った佐々部監督が、最後に手掛けたのが本作品。鹿児島・薩摩川内市の伝統行事「川内大綱引」を題材に、とび職の青年・有馬武志役の俳優三浦貴大(35)と、女優の知英(ジヨン、27)演じる韓国出身の研修医ヨ・ジヒョンとの恋、それを取り巻く家族模様を描いた。妹役には女優の比嘉愛未(34)が演じている。西田は「武志とジヒョンの恋が軸になっているが、監督は有馬家を通して、家族のあり方に迫るという思いで撮っていた」と振り返った。

「川内大綱引」は、全長365メートル、重さ7トンの巨大な大綱を、約3000人の上半身裸の男たちが、体をぶつけ合い、引き合う、400年以上の歴史を持つ“男たちの戦い”だ。佐々部さんの「ウソがあったらいけない」という思いから、作品には実際の映像を組み込んだ。俳優陣を入れた撮影も、「大綱引」から6日後の興奮冷めやらぬなかで撮影し、リアリティーを追求した。「監督が全神経を集中させて、何が起こるかわからない現場を、全エネルギーを注ぎ込んで撮った」と自信を見せた。

佐々部さんにとって、韓国との交流を描いた内容の作品は「カーテンコール」、「チルソクの夏」に続き3作目になる。「大阪アジアン映画祭で、特別招待作品として上映されることに、監督も喜んでいると思います」と語った。

全国公開は5月7日を予定している。名監督が生んだ最新作にして、最後の力作が日本中を魅了する。【南谷竜則】